2019年2月、環境省により「国内希少野生動植物種」に指定され、ヒサマツサイカブトは採集禁止となりました。下記、採集記は規制以前のものです。 |
2007.06.09(土)へっぽこ遠征in大東諸島(2日目) 沖縄県・南大東島 9:00AM 晴れのち雨 28℃ 南大東島、2日目の朝。 ・・・寝起きにテレビを点けると天気予報をやっているので、見ていると関東圏の天気予報しかやってない。噂では聞いていたが、この南大東島のテレビは関東の番組しかやってないのである。・・・なので、“沖縄に居ながら関東地方の番組しか観れない”状況になっている。何故その様な状況になっているかと言うと、この南大東島の電波は“東京都”である小笠原諸島の電波中継所を経由して入ってきているので、東京と同じテレビしか映らないとの事であった。島の方に話を伺ってみると、テレビで新しい商品のCMをやっていて、沖縄本島に買いに行っても“まだ入荷していない”といったラグも良くあるとの事であった。また少々驚いたのは子供に「沖縄県知事は誰?」と聞くと数名は「石原知事」と答える事であった。・・・なんと言うか、この南大東島にてテレビの影響力の大きさを感じてしまった。・・・それにしても、今居る場所の天気予報が分からないというのは、非常に不便な事である!
朝からテレビを見ながら考えさせられてしまったが、宿の朝食を食べた後、何とか“有料”にて入手した「南大東島の地図」を見ながら今日の予定を立てていく。こうやって改めて地図を見てみると、南大東島に山の存在は無く、面積の殆どがサイトウキビ畑なのだろうと感じる。そういった部分でも南大東島に林と呼べる樹々は、少ない様である。
とりあえず地図を持って宿を出発する。何となくでも目星を立ててみたので、とりあえずは目的地に向かってみる。途中で南大東島、唯一の信号機を確認していく。島の中に信号機が1台のみと聞くと、神津島を思い出す。
果たしてダイトウヒラタの野外活動は確認できるのか?そう思いを馳せながらダイトウビロウの林を探索してみる。どうみてもパッと見、ヤシの樹にしか見えないので、クワガタがいるような気がしない。しかし、その様な場所でも時折モクマオウの樹が点在していたりもするので、樹が少ない南大東島は視野を広く活動した方が良いと“へっぽこ”なりに思っている。・・・それにしても蚊が多い!林に入ると「待ってました!」と言わんばかりに“大きめな”蚊の大群が寄ってくる。自分はO型なので余計に集まりやすい体質の様である。
探索を続けていくと南大東島は小さな島ながら、水は豊富にあると感じる。島のあちこちに池もあるので、蛙や蚊が多い事も肯ける。池の水面を見ると、何やら小さな魚が沢山泳いでいるのが窺える。ちょうど近くに親子連れがバケツを持って、網で“何か”をすくっているので、バケツの中を見せて頂いた。
見た感じメダカというよりもカダヤシが泳いでいる様に窺えた。とりあえず親子連れに何の魚か伺ってみると「グッピーですよ!」と言う。「・・・まさか、南大東島にグッピーが居るのか!?」と思ったが、話によると「以前、蚊を退治する為に人為的に持ち込まれた」との事であった。結果としてそれが帰化して島のどこにでも確認できるほど増えてしまった様である。・・・に、しては蚊が減ってない!!
とりあえず周辺を探索してみたが、期待するような結果は得られなかった。考えていても仕方が無いので、場所を移動しながら探索を続けて行く。
暫くすると、島の小学生の子供たちが遊んでいるのが目に入った。「そうだ!せっかくなので南大東島の子供に話しを聞いてみよう!」そう思い、挨拶をして自分が何の為に南大東島に来たかを子供たちに説明してみる。・・・正直な所、あまり期待した答えは帰って来ないと思ったら、子供たちは、「南大東には“ダイトウヒラタクワガタ”と“ダイトウマメクワガタ”しか生息してないですよ。」と言う!!・・・思ってもない具体的な回答が帰ってきたので、かなり驚いた。更に子供たちは、私に対して「おじさんは採集しても東京で逃がしたり、売ったりしないでね...」と言ってきた。 非常にリアルな言葉に更に驚いたが、私はとりあえず「おじさんではなくて、まだお兄さんだよ!」と言おうと思ったが、どうでもいい(泣)事だったので、私は「君達は詳しいね!おじさん(容認)は、写真だけ撮れれば持ち帰らないスタイルで楽しんでいるんだよ。」と答えた。・・・すると子供たちは「なら良かった!」と答えた。 意味深だなぁと思ったので、理由を聞いてみると「最近はヒラタが少なくなってます・・・」と言うのであった。“逃がしたり、売ったり”という言葉から察する所、島の子供のレベルでもクワガタ採集に対する現状が窺い知れた。 ・・・私は一瞬にして色々と考え込んでしまった。 ・・・なんと言うか、人ぞれぞれクワガタ採集に対して“目的意識”も違っていると思う。自分の場合、たまたまなのか「飼育、標本、販売」などと言った趣味が無く、現地の“自然体の姿”を自分の目で確認し、ホームページ用に写真が撮れれば、それで満足なのである。・・・しかし、例え自分が“キャッチ&リリース”を主体とした採集者だと言っても、他の人から見ればそれすら“単なるエゴ”として捉えられてしまう気がしてしまった。 そして、私が子供たち(島の方々)が懸念している様な採集者でないといっても、子供たちから聞いた言葉は“採集者全体に向けられた言葉”の様に聞こえたので、人事ではない気がしていた。最近はミヤマ☆仮面さんとも“森林保護”や“環境保護”と言った部分でも話をしていたので、こういった現場の声と言うのは非常に骨身に沁みる。その様な意味では、この南大東島に来てみて“クワガタ採集とは?”というアバウトながらも大事な部分に触れる事が出来た気がした。 そんな重い感覚を受けていると、子供たちは「一緒に採集に行っても良いですよ!」と言ってくれた。 どうやら私の事を信用してくれる様なのであった。・・・正直言って、もの凄く嬉しかったし、救われた気分だった。せっかく、南大東島の“子供たちとのふれあい”だと感じたので、時間を決めて一緒に探索する事になった。考えてみれば、この様な“ふれあい”は離島遠征で初めてなので、自分も子供心に戻った感じがして、もの凄くワクワクする!
どうやら“秘密のポイント”に案内してくれる様であった。興味本位に「地元の子供たちは、どんな採集をするのだろう?」と思っていたら、子供たちは「この朽木をほじります!」と言いながら、なんと“素手”で朽木をほじり始めた。本当は野外活動を期待していたので少々面食らった感じもしたが、子供たちは何の迷いも無く“素手”で少しずつ朽ちた部分を掘っていく。私は「いつもこんな感じの採集方法なの?」と聞くと、「南大東のクワガタは朽木でしか採れません」と言う。・・・改めて子供たちの博学ぶりに脱帽する。
クワガタの話をしながらも、話題は野球の話やスポーツの話で盛り上がる。・・・普段、東京で感じるストレスな空間と違って、純粋な子供たちと過す楽しい一時。私は独身であるが、いつか自分に子供が出来たら、子供と一緒にクワガタ探索に出かけて今日の様な時間を過ごしてみたいと感じた。話をしながらも子供たち無心に掘っている。ダイトウマメも数頭確認できる。 ・・・そして次の瞬間。 「あっ! いたっ!! メスです!!」 子供の言う方を観ると、赤いダイトウヒラタ♀の姿がそこにあった!!第一印象は、腹が大きく、とにかく赤い印象を受ける。噂ではダイトウヒラタは“赤いヒラタ”だと聞いていたが、まさかここまで赤いとは思わなかった。こうやってみると以前確認した事のある、オキノエラブヒラタの大顎の裏にある“金色の微毛”や今回のダイトウヒラタの“地域変化”は印象深いものであると改めて感じる。
子供たちは得意げに「ほら!居たでしょ」と言いながら「オスも見つけないとなぁ」と言って、再び掘り始める。・・・確かにこの場所で、もう少し時間を掛ければ♂のダイトウヒラタも確認できるかもしれない。しかし私は、ある程度時間を決めて一緒に探索しようと思った部分と、南大東島の子供たちの“秘密のポイント”であるこの場所を紹介してもらい、ダイトウヒラタ♀×1頭が確認(撮影)できただけで本当に満足だった。それにやはり発生木である朽木を崩す事の意味合いも感じたので、これ以上の追求は止めようと説明した。 とにかく子供たちにお礼を言う。すると子供たちは「おじさん(容認)、このクワガタあげるよ!」と言ってくれた。なんと言うか、その気持ちが嬉しかった。しかし、ここは“へっぽこ”なりにも信念があるので、私は「有難う!でも本当に写真だけ撮れれば良いんだよ。」と言った。すると子供たちは、この採集したダイトウヒラタ♀を学校で飼育すると言い出した。・・・これはこれで良いと思った。小学校のクラスで皆で飼育するのであれば、生きた教材にもなると思うし、この子供たちが世話をしていく際に少しでも今日の事を思い出してくれれば、ちょっとした“ふれあい”という足跡を残せる様な気がした。 “一期一会”という言葉が当てはまるか分からないが、この様に南大東島の子供たちとクワガタ探索を行い、ふれあえただけでも今回の遠征は来た甲斐があったと思う。改めて子供たちに感謝の意を述べて、別れを告げた。
・・・なんだか、一息ついたら急に腹が減り始めた。時計を見ると昼を刻んでいるので、昼食をとる事にした。この南大東島はJAが1件あるので、そこへ行くと嬉しい事に「大東寿司」なる地元の食べ物を売っているので、躊躇する事無く購入した。大東寿司とは、サワラを醤油付けにした寿司で食べてみると、非常に美味であった!昨日の「大東そば」といい、この南大東では食事が良い感じで嬉しい。・・・すぐに平らげてしまった。
・・・昼食後、見晴らしの良い場所で休憩しながらボンヤリと考える。・・・自分の様な“緩いスタイル”の探索は少なくとも“クワガタ採集者”を謳っている以上、レベルとしては「最低ランク」だと自分でも思う。高い遠征費を捻出して離島まで来ても、“ギネス・珍品・タコ採れ”と言った内容は皆無で、それこそ離島遠征でもボ〜ズに近い結果も少なくない。・・・だからこそ、探索時に起こった事柄は、隠す事無く有りのまま採集記にしていきたいと思う。世の中の流れの逆を行く、文字通り“へっぽこ”採集者であるが、こんなスタイルでも自分なりに信念を持って今後も楽しんで行きたいと思った。
その後もボンヤリしていると、足元の花に「リュウキュウアサギマダラ」が飛んできた。後で伺った話では「アサギマダラ」と違い、数年前までは南大東島では見られなかった種であるが、台風などで流入してきた可能性があるそうで、こういった流入も島の進行形との事であった。
・・・そろそろ昼休みを終えようと車に乗り込む。
とりあえず探索を再開しようと車を走らせると、「海軍棒」なる標識が目に入ったので、気になり立ち寄ってみる。以前、海軍の軍艦がこの島を探検した時に“測量の基準”として建てた棒らしいが、いまいちな感じであった...。
その海岸から何気なく北の方角を見ると、北大東島が見えた。北大東島の方が、南より小さい。
・・・先程の子供たちと別れる際に“興味深い話”をしていた事を思い出した。「島まるごと館に行けば、ヒサマツサイカブトの標本があります!」せっかく南大東島まで来ているのだからと思い、立ち寄らせて頂く事にした。
館内の入ってみると、すぐに副館長の東氏が出迎えて頂き挨拶を交わす。自分の目的や先程採集を共にした子供たちの話をしている内に意気投合し、いつしか話は盛り上がっていった。非常に熱心に島の事を説明して頂いた。因みに館長は、ダイトウオオコウモリとの事であった。
館内には島の様々な展示品が置いているが、気になっていたヒサマツサイカブトの標本を見掛けなかったので、思い切って東副館長に尋ねてみた。すると副館長は「ありますよ!」と言って、棚の奥にしまってあった標本箱を持ってきてくれた。・・・標本箱を拝見して驚いた!「タイワンカブトよりゴツくて大きい!!」それが第一印象であった。
ヒサマツサイカブトの隣に、タイワンカブトの標本もあったのだが、比べてみると明らかに雰囲気が違うのである。全体の丸さ加減から、頭部の陥没部分の凹み具合や個体の赤っぽさまで、その差は歴然であった。副館長のお話を伺っていて非常に興味深かった点として、この南大東島にもタイワンカブトは生息して居るとの事であった。最近になってもタイワンカブトの生息地として“北大東島?南大東島?”となっていたが、どうやら南大東島には“生息している”という事になるのだろう。
ただ、未だにヒサマツサイカブトは別種ではなく、タイワンカブトの地域変化に留めると言った声もある様で、まだまだ採集例の少ない個体なので今後の更なる研究が待たれるのだろう。ヒサマツサイカブトの話を伺っている内に、とうてい“へっぽこ”では採集不可能な気がしてきた...。 副館長には大変良くして頂いた。お礼を言って「島まるごと館」を後にする。
再び探索に戻る。南国特有のギラつく日差しを受けながら赤土の畑を歩く。気分的には“子供たちとの採集”&“島まるごと館訪問”にて、それなりに充実感は得ている。・・・後は独自に活動し、目標に向かって頑張ってみようと日暮れまで探索を続けてみる。
それにしても“6月半ばで梅雨明け”とは本当の様である。モクマオウの林に入る手前に“ひまわり”が満開の場所があった。改めて遠征前の東京では“梅雨入り前”だったので、この光景に見て“日本の広さ”を感じる。
とにかく暑い!少し歩くと汗が大量に噴出す。それでもモクマオウやダイトウビロウの林が目に入れば、とりあえずは行ってみる。狭く限られた生息地に少しでも近づく為に噴出す汗を拭い、歩を進めていく。
南大東島は防風林の松以外では、モクマオウやダイトウビロウが殆どの割合を占めているが、稀にバナナがなっている場所がある。人為的に植えたのかも知れないが、ダイトウヒラタやヒサマツサイカブトが潜んでいる可能性もあると思い、一応は探してみる。・・・しかし、全く甲虫の姿は確認できない。
その後も時間を掛けて探索してみたものの、今日も昼間の結果は振るわなかった。やはりこの南大東島で斧を使用せずに、ダイトウヒラタ“野外活動”を確認する事が出来ないのだろうか?・・・気が付くと夕食の時間が近付いている。島で唯一のスーパーであるJAも18時前には閉店してしまうので、やはり宿にて食事を取らないと明日の朝まで空腹のままいなければならない。・・・さすがにそれは厳しいので、一度仕切りなおす意味でも宿に戻る事にした。
夕食後、外灯周りを開始する。昨晩は外灯を回っても虫らしいものが殆ど集まっていなかったので、少々不安になる。それでもダイトウヒラタの野外活動やヒサマツサイカブトの確認をしてみたいので、少ない可能性ながらも“もしかすると”に期待しながら探索を続ける。とりあえず街中の外灯や自販機を見て回り、その後サイトウキビ畑のある場所近くの外灯まで何回か巡回していく。
・・・しかし今日も全くと言って良いほど、明るい外灯や自販機には何も来ていない。曇っているので月は出ていない状況で、夕方に少し降った雨のせいで蒸し暑くなっている。状況的には外灯に虫が集まっていても良い気もするが、蛾ですらあまり集まってきていない。ホント雰囲気が全く感じられない。ある意味、本土でコクワが外灯に集まっている状況というのは、幸せな環境なのかも知れない。
暫く外灯周りを行ったが、全く成果は無かった。で、あればと思いフルーツトラップを確認していく。・・・しかし、こちらもアフリカマイマイとゴキ以外は来ておらず、ダイトウヒラタやヒサマツサイカブトの姿は確認できなかった。
・・・夜回りとしては島を数週するほど走り回ってみたが、結局何も確認する事は出来なかった。・・・ヒサマツサイカブト...“幻”と呼ばれるだけあって、自分の様な“へっぽこ”には見付ける事は出来ないのだろうか? 成績:ダイトウヒラタ♀×1 ダイトウマメ×3 (ダイトウヒラタ♀は、南大東の子供が学校で飼育すると持ち帰り。 ダイトウマメは、全てリリース) |
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