ご注意!

2019年2月、環境省により「国内希少野生動植物種」に指定され、ヒサマツサイカブト採集禁止となりました。下記、採集記は規制以前のものです。


2007.06.10(日)へっぽこ遠征in大東諸島(3日目)
沖縄県・南大東島 9:00AM 曇り時々晴れ 28℃

南大東島、最後の朝。

窓の外を見ると、幸いにして天候は悪くない。今回の遠征は、殆ど“雨に苦労してない”という点は有り難い。・・・少し早めに宿の朝食を頂きながら、昨日までを振り返る。2晩、外灯をチェックしたが、ヒサマツサイカブトは確認できなかった。今日も午後には飛行機の都合で、この南大東島を発たなければならないので時間は限られている。この南大東島に来た目的は“ヒサマツサイカブトの確認”と“ダイトウヒラタの野外活動”である。残された時間で何とか、このどちからを達成してみたい思いはある。・・・とにかく行動して、可能性を見い出していくしかないと思うので、身支度を済ませ宿を後にする。

南大東島、最後の朝
南大東島、最後の朝




・・・レンタカーに乗り込むと、ガソリンが切れ掛かっている。狭い島ながらも自分なりに、“外灯チェックとフルーツトラップ”探索は行なっている。他の方から見れば「南大東島まで来ているのだから“材割り採集”をすれば良いのに...。」と思われる方もいるかも知れない。・・・しかし私は“人があまり来ない夏場の採集”だからこそ、大量の蚊に刺されてでも、効率の悪い“フルーツトラップ”(可能なら樹液採集)に拘ってみたかった。結果として良い内容が得られなくても、自分なりの調査が出来れば満足している。・・・とりあえずガソリンは、少ないながらも何とか帰りまでは持ちそうなので、そのまま探索を開始する。

最後の探索に向かう
最後の探索に向かう


まずは、フルーツトラップの回収も兼ねながら“ダイトウヒラタの野外活動”に賭けて行く。自分なりの情報では、今までフルーツトラップにダイトウヒラタが来たと言う話は聞いた事無かったが、最後まで望みを捨てないで確認していく。トラップの仕掛け方も、樹の幹や地面に直接置いてみたりと様々な状況下で試してみたが、回収しながら確認していくのだが、ダイトウヒラタの姿は確認できない。トラップは、少ないながらも島の広範囲に設置したので最後の1個まで可能性を信じて回収(確認)して行く。

トラップには来てない
トラップには来てない



・・・それにしても林内で、嫌と言うほどヒキガエルを見掛ける。・・・勝手に想像してしまったが、神津島では“ヒキガエルが居なかったからミクラミヤマが生き残れた”と聞いた事がある。・・・となると、数少ないダイトウヒラタがせっかく野外活動をしたとしても、どれだけ餌食になっているのか気になってしまった。もしかするとヒキガエルの胃袋からダイトウヒラタが確認できるのかも知れない。

こればっかり!
こればっかり!


その後もトラップを回収しながら林内を確認していく。結局の所、限られた時間で「“野外活動”するダイトウヒラタは、確認できないだろう...。」と諦めムードも感じていた。相変わらず多くのヒキガエルがうごめく中、歩行性と思われるダイトウヒラタを探していく。

・・・すると、1本の倒木上に何か赤い物体が歩いているのが目に入った。

一瞬ゴキにも感じたが、その“遅い歩き方”でゴキでない事は確信していた。正直な所「野外活動シーンの撮影は無理だろう...。」と思い込み始めていただけに、自分が探していた“目標物”であろう目の前の個体を観て、少々混乱に近い感覚を覚えた。とりあえず落ち着こうと思い、一度深呼吸してから近付いてみた。

何かいる!!
何かいる!!



・・・その赤い物体は、ダイトウヒラタであった。・・・その光景を目の当たりにして、徐々に実感が湧いてくる。まずは「無理だろう...。」と思っていたダイトウヒラタの“野外活動”を自分の目で確認できた喜び。そして何より“ノコよりも赤いヒラタ”という、美しいワインレッドな個体に感動を覚えた。

南大東島・ダイトウヒラタ♀
南大東島・ダイトウヒラタ♀



・・・何枚か撮影し、少し落ち着いた所で冷静になって考えてみる。「・・・それにしても、この個体は何故この場所に居たのであろう?」そう思い、自分なりに説を考えてみると...。

A.この倒木から発生した個体が蛹室から脱出し、倒木上を歩いていた。

B.別の場所で発生した個体が、♂と交尾後に産卵木を探しにやってきた。

とりあえず安易に上記の2つの説を考えてみたので、“A”の可能性を探る為に材を起こしたりしながら、この倒木を少し調べてみたが特に脱出口や他の個体は確認できなかった。“B”の可能性があればと思い、周辺を探索してみる事にした。

・・・すると、個体を確認した数メートル先に、多くの倒木がある事が分かった。「もしかすると、この倒木群から発生した可能性もあるのではないか?」と思い、その倒木のいくつかを起こしてみたが、朽ちた部分からダイトウマメが見え隠れする程度で、他のダイトウヒラタの個体は確認できなかった。

倒木は多い
倒木は多い



・・・もしかすると、今回の遠征で“斧を持参し使用すれば”更なる個体の確認は出来たかも知れないが、今回の“自分なりの目標や活動内容”からみても、その選択肢は無かった。本音としては、ダイトウヒラタ♂の個体も観てみたかったが、♀の美しいワインレッドが野外の姿として画像を得る事ができただけで、今回の遠征としては充分であった。


・・・実はこの周辺にもフルーツトラップを仕掛けて置いたのだが、結果としては全くダメであった。トラップ自体の完成度も悪かったのかも知れない。今回の遠征では、様々な点からも勉強になったので、次があれば参考にしていきたいとも思う。・・・とりあえず自分の仕掛けたフルーツトラップは全て回収する。

トラップは全て回収する
トラップは全て回収する




ダイトウヒラタの確認で時間の過ぎるのも忘れていたが、少し落ち着くと腹が減ってきた。今日は最終日なので「大東そば」を食べておこうと思い店を訪れてみたが、休みであった。昨日も終日休みの様だったので、この3日間で初日しか食べるチャンスが無かった。・・・仕方ないのでJAへ行き弁当を購入する。あまり期待してなかったが、実は値段を見てビックリ!東京だったら500円以上はするボリュームで、350円の値札が付いている。凄く安い印象を受ける。具もポークハムやゴーヤチャンプルが入っていて、いかにも沖縄らしい。

沖縄の弁当を食べる
沖縄の弁当を食べる



せっかくなので海の見える場所で弁当を食べようと思い、港に来てみた。・・・すると水面を見て驚いた!!

港に行ってみる
港に行ってみる



とんでもないほど蒼いのであった。・・・おそらく過去の南西諸島遠征の中でも“一番蒼く”感じる。“トロピカル”で“ブルーハワイ”な印象で、カキ氷のシロップの様な蒼さである。なんとも言えない、この吸い込まれそうな美しい海に感動を覚えた。

凄まじく蒼い!
凄まじく蒼い!



さらに驚いた事は、釣りをしている人がいるので、弁当を食べながら見ていた...。すると獲物が掛かった様だったので、駆け寄って何が釣れたか見てみると“東京では観た事もない”トロピカルな魚が釣れていた。釣りをしている地元の方に魚の名前を伺ってみると「トッカジャー」だと言う。地元の呼び名なのか分からないが、もちろん聞いたこともない名前である。・・・ちなみに食べられるらしい。

トッカジャー
トッカジャー


昼食を海辺で食べた後、市街地に戻る。初日から気になっていた“レール”の理由を確認したかったので、資料を片手にその場所を訪れてみる。すると機関車とディーゼル車が展示してあった。「確か記憶では、沖縄県に列車は走っていなかったはず...。」と思いながら、説明書きを読んでみると、どうやらこの機関車たちは人を運ぶというよりは、島で大量に生産しているサトウキビを運ぶ為に使用されていた「シュガートレイン」という物らしい。以前はフル活動していたシュガートレインであったが、荷物を積みすぎての転倒など事故も多かった様で、次第に大型のトラックでの配送に移行して行き、現在はこのシュガートレインは使用されていない。

シュガートレイン
シュガートレイン




・・・それなりに時間は過ぎて行く。ダイトウヒラタの活動も確認できたので満足感はあるのだが、せっかく南大東島まで来たのだから“もう1つの目標”でもある“ヒサマツサイカブトの確認”をしておきたいと思っていた。時間的には残り数時間という所であるが「可能性があるのであれば、チャレンジしておくべき!」とテンションも上がり、サトウキビ畑の積み肥を探していく。・・・しかし、積み肥から出てくるのはハナムグリの幼虫ばかりで、大型の幼虫は確認できない。


サトウキビの積み肥



それでもレンタカーのガソリンが切れるまで探索してみようと、島の中を走り回る。すると急に“動物臭”のする場所があったので、家畜を飼育している場所があるのかと周辺を探してみると、なんと牛舎を発見した。この南大東島では、大型の家畜を飼育している場所は無いと思っていたので、期待感が込み上げてきた。早速、近くの家を訪ね許可を頂く事にした。この様な場所では、必ず管理者に許可を取らないと何らかのトラブルに繋がるので注意しなくてはいけない。

牛舎を確認
牛舎を確認



家の主に“作業目的と使用推定時間”を説明して許可を頂いた。早速、それらしい場所に向かい、近くに落ちている太い棒を拾い掘ってみる。・・・ただ、基本的に“藁と牛糞”なので綺麗な場所ではない...。棒でひと掻きする度に“数百”に近い蝿が飛び舞う。・・・そして得体の知らない羽虫も大量に飛び舞う。・・・そして当然、臭う。なんと言うか“お茶が腐った臭い”という表現しか出来ない。・・・暫くするとその状況になれてきたが、梅雨明けした南国なので大量の汗が噴出す。大量の積み肥を除けての確認作業は、非常に体力を消耗する。何とか体力の続く限り「ヒサマツサイカブトを確認してみたい...。」と思う一心で積み肥を掘っていく。

華麗なる積み肥
華麗なる積み肥



・・・時間を掛けて体力の続く限り、掘っていく。・・・しかし、次第に腕も上がらないほど体力を消耗しきってしまった。

・・・そして、ふと思った。

「俺、絶海の孤島で、何でウンコの山を掘ってんだろう...。」


・・・残念ながら可能な限り調査を続けたが、時間も体力も無くなってしまった。


・・・既に両腕が言う事を利かない状態で、少々“牛糞臭い”レンタカーを返却し、南大東空港に向かう。手を洗い着替えをした後、搭乗手続きを済ませる。普段であれば天候の状態も気になる所であるが、この南大東島では天候には恵まれたので、その心配は無かった。そのまま搭乗時刻を待つ。

帰京の手続きをする
帰京の手続きをする




定刻通り、飛行機は経由空港である那覇空港に向かう。小さくなっていく南大東島を見ながら、今回の遠征を振り返ってみる。・・・2泊3日の滞在期間の中で可能な限りの探索は行なったが、結果だけ見れば振るわなかったかも知れない。しかし自分の中ではそれなりの充実感は得られたと感じている。2日目に現地の子供たちと楽しくクワガタ探索が出来た事も大きかったと思うし、その後の「島まるごと館」にて副館長とのヒサマツサイカブトの標本を見ながらの談義は、非常に勉強になった。そして、最終日には何とか野外のダイトウヒラタも確認できた。欲を言えばフルーツトラップに集まるのか、もう少し追求してみたかった点やヒサマツサイカブトの個体確認もしてみたかったが、全ての事が上手くいくとも思っていないので、今回の遠征はこれで良かったのかも知れない...。

ありがとう南大東島!
ありがとう南大東島!



・・・ありがとう。南大東島。 是非とも再び訪れてみたい“素晴らしい島”だった!



成績ダイトウヒラタ♀×1 ダイトウマメ×2
(確認後、全てリリース)

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