ご注意!

2019年2月、環境省により「国内希少野生動植物種」に指定され、ヒサマツサイカブト採集禁止となりました。下記、採集記は規制以前のものです。


2007.06.08(金)へっぽこ遠征in大東諸島(1日目)
沖縄県・南大東島 11:00AM 晴れ時々雨 28℃ 暑い

2007年、最初の南西諸島遠征は南大東島にする事にした。今までの遠征の中で、まだ行った事の無い島なので以前から興味があった。大東島というと“冬場の材割り採集”と言った印象を受けていたので、採集者として“ノルマ”の無い“へっぽこ”としては、逆に採集者の訪れない夏場に“斧を持たず”に南大東島に住む「ダイトウヒラタ」の野外活動の姿や確認例の少ない「ヒサマツサイカブト」の姿を確認してみたいと思った。実は、この大東島は100年ほど前まで人が住んでおらず、そういった観点から見ても“未知の島”として島の文化としても、クワガタの歴史としても浅いので“へっぽこ”ながらも新たな発見を期待しながら、南大東島へ向かう事を決めた。

初めての南大東島
初めての南大東島



・・・起床したのは4時だったが、外はまだ薄暗かった。午前6時半の飛行機の乗る為に、羽田空港には5時半に到着した。正直な所、頭もボンヤリしており体もダルイ。それでも搭乗手続きを行い、時間があるので喫茶店に入り朝食を取る。・・・眠い zzz。

AM5:30 羽田空港到着
AM5:30 羽田空港到着



搭乗時刻が来たので飛行機の乗り込む。朝一番という事もあり、滑走路はまだ渋滞してないらしい。順調に飛行機は離陸する。少しすると梅雨空であった雲を一気に突き抜け、眩しい太陽に光が射し込んできた。・・・それでも眠いので窓の日除けを閉じて、一眠りする事にした。

梅雨空を一気に突き抜ける!
梅雨空を一気に突き抜ける!


羽田を離陸してから1時間半。うつらうつらしながらも窓の外を見ると、空は梅雨空ながらも南国の海が広がっていた!一気に眠気も覚め、テンションがあがる。“へっぽこ”2007年の“南西諸島採集”が始まる事を実感する!

南西の海が見えてきた!
南西の海が見えてきた!



那覇空港に到着後、南大東島行きのチケットの手続きを行い、一息つこうと窓の外に目をやると、もの凄い数の飛行機が駐車?してあった。よく見ると自衛隊の飛行機の様である。普段、数多くの飛行機を目にする機会がないせいか、暫く時間があったので見入ってしまった。途中、駐車?中の飛行機が、上手く飛行機の合間を縫って滑走路に向かうシーンを見て妙に感心してしまった。

飛行機の駐車所(那覇空港)
飛行機の駐車所(那覇空港)



暫く飛行機を見ていると“見慣れた”飛行機が出てきた。昨年も与那国島遠征時に搭乗した「琉球エアーコミューター」の機体であった。味のあるプロペラ機。どうやら今回は、あれに乗って南大東島に行く様である。乗る飛行機が小さければ小さいほど、離島遠征の実感が湧いてくる。

琉球エアーコミューター
琉球エアーコミューター



・・・そろそろ南大東島行きの時刻が迫ってきたので、搭乗口に向かう。いよいよ南大東島へ“テイクオフ”となる。




沖縄本島を離陸して約360q。時間にして1時間程度で南大東島に到着する。プロペラ機の窓から見える光景は“赤土とサイトウキビ畑”ばかりが見える。そして、その島の外周を防風林として少量の樹々が見える。・・・いつもながら“期待と不安”の狭間を感じる、この瞬間が堪らない!!

まもなく南大東島
まもなく南大東島



到着して驚いたのは、那覇空港では小雨交じりの梅雨空であったはずが、南大東島に着いたら青空が広がっているのである。同じ沖縄でも南へ360qも離れていると随分と変わるものだと感じる。宿の方に迎えに来て頂いたので挨拶しながら話を伺うと、何ともう“梅雨明け”だと言う。今朝方、出発した東京では、まだ梅雨入り宣言がなされていない中、この南大東島では梅雨は明けている(様な)のであった。・・・日本は狭くない!

南大東島到着!!
南大東島到着!!



宿に向かいながら車の窓の外を眺めると、噂では聞いていたが見事なまでサイトウキビ畑ばかりである。沖縄本島や石垣島辺りでもサトイキビ畑は良く見かけたが、この南大東島では比にならないほど広大に広がっている。高い建物も全く無いので“古き良き沖縄”の印象を勝手に感じてしまうが、この島に人が入ってまだ100年程度の島なのであった。話を聞くと、宿の方も30年ほど前に沖縄本島から移住されたとの事であった。

噂通りのサイトウキビ畑ばかり
噂通りのサイトウキビ畑ばかり



とりあえず腹が減っては...、と思い腹ごしらえをする事にした。雰囲気的に奄美大島や石垣島と違って、どちらかというと不便そうな島なので“食事処”を確保するのも離島遠征の中で重要なポイントになってくる。幸い宿の近くに「大東そば」なる看板が見える。店構えを見た感じ、なんとも言えない風情を感じる。・・・店内を覗いてみると、観光客らしき客が数名入ってる。とにかく入ってみる事にする。

雰囲気が良い!!
雰囲気が良い!!



暫くすると「大東そば」が運ばれてきた。南西諸島めぐりをしていると各島で出てくる“沖縄そば”が本当に楽しみである。とにかく食べてみる。・・・「美味い!!」沖縄そばの中では、かなりコシがあり、豚とカツオだしベースのスープも絶品!おそらく私が今までで食べた沖縄そば(沖縄ソーキそば、石垣そば、与那国そば)の中で一番美味しいと感じる。南大東の訪れる方が居れば、是非ともオススメだと思う。

大東そば(美味い!!)
大東そば(美味い!!)




大東そばを美味しく頂き、さっそく探索に入る。・・・と言っても、林らしい林が無い様に感じる。

林らしい林が少ない
林らしい林が少ない



・・・更に困った事は、いつもは離島採集では持参している地図をこの遠征日までに買う事ができなかった。「まぁそれほど大きくない島だし、空港で島の地図が手に入るだろう...。」と思っていたのだが、この南大東島に限って空港に島の案内地図が置いてなかったのである。不幸は重なるもので、レンタカーは通常“全車ナビ付き”のトヨタレンタカーを使用しているが、この南大東島ではトヨタレンタカーが無い。宿に手配して頂いたレンタカーを使用するので、当然ナビなどと言うシャレた物は付いていない....。レンタカーを使用しなくても島の狭さからみて、充分に回れる程度であると感じたが、南西諸島特有の“突然のスコール”が嫌だった事と、初めての南大東島ということもあって、レンタカーを使用した。



これで“冬場の材割り主流”と言われている南大東島で「斧を持参せず“夏場の野外活動”を確認してやろう!」というのは、まさに“虫が良すぎる”のかも知れないが、人があまりやらない事だからこそ“へっぽこ”としては興味が湧いている。


とりあえず、島の外周と内周に“僅かに残った”防風林があるので、樹が少しでも生えている場所に向かってみた。殆どが「ダイトウビロウ」と呼ばれるヤシの樹と「モクマオウ」と呼ばれる樹ばかりである。少しでも雰囲気のありそうな場所を探すべく、小さな林に突入してみる。

とりあえず突入!
とりあえず突入!



南大東島は“サンゴ礁が隆起して出来た島”と言われており、林の中は石灰石がやたらとむき出しになっている。場所によっては石灰石の岩の中に樹が生えている様な場所もあり、危険極まりない。ここで転んだりすれば怪我をするだろうし、何よりゴツゴツした足場が悪いのが辛い所である。逆に隆起している場所もあれば、凹んだ場所に落ち葉が溜まり“落とし穴”の様になっている箇所もあり“リアルトラップ”になっている。・・・非常にストレスの溜まる足場だが、この南大東島で採集を行う際は、これらに気を使わなければならない。

岩がゴツゴツしている
岩がゴツゴツしている



足場が悪いついでに、林の中に入ると足元で“大型のヒキガエル”が大量に動き出す。島の中に“どれ程いるのか?”と思うほど個体数は多い。カエルも小さければ可愛いものだが、かなり大型なので林の中でうごめく姿は気持ちの良いものではない...。しかも静かな林の中で急に飛び跳ねられると、こちらの方が飛び跳ねたいくらい驚く。

多すぎるカエル
多すぎるカエル



・・・更に枝を見るとなんだか“気味の悪い”大きなカタツムリが、大量に見受けられる。どうやら「アフリカマイマイ」というらしい。後で島の方に聞いてみると、どうやら食用として人為的に持ち込まれたものが帰化してしまったらしい。大きさは10cmを越えるものが多く、当然ながら気持ち悪い...。

怪しいカタツムリが大量にいる
怪しいカタツムリが大量にいる



・・・しかし、ヒキガエルよりも、アフリカマイマイよりも“厄介”だったのは、林に入ってすぐに集まってきた「蚊」であった。噂では聞いていたが、この蚊の量もハンパでなく多い。しかも東京で見掛ける蚊よりも二回りくらい大きい様で、服の上からでも容赦なく2割増の注射針を刺してくる。・・・当然かゆい。この大東諸島が夏場の採集を敬遠される理由をここでも実感した。


暫く探索を続けていくが、樹液の出るような樹は無い様である。やはり大東諸島でクワガタの野外活動を確認するのは、難しいのだろうか?そう思いながらもダイトウヒラタ以外に「ダイトウマメ」も生息している事を思い出し、先月遠征した八丈島のチビクワのイメージで、転がっているグズグズの腕ほど細い倒木を素手で少し砕いてみると、あっけなくダイトウマメが数頭出てきた。・・・ただでさえ“へっぽこ”なので、この手の小型種は殆ど区別が付かない。正直パッと観ただけでは、先月の八丈島のチビクワを全く同じに見えてしまう。これで通常のマメクワと別種と言われても、何がどう違うのか見分けが付かない...。

南大東島・ダイトウマメ
南大東島・ダイトウマメ



元々“夏場の野外活動”を目標に南大東島に訪れているので、とりあえずこのタイミングでダイトウマメが確認できたので、これ以上の深追いは止めて本来の探索に戻る事にした。“本来の活動”という事で、持参したフルーツトラップ(バナナ)を設置していく。自分の場合、サラリーマンとして長期休暇が取れないので、遠征2日ほど前に購入したバナナをアルコール度数の高い焼酎を自宅にて調合して、密閉性の高い袋に入れた状態で丸1日以上、経過したものを東京から持ち込んだ。すでにある程度“出来上がった状態”で持ち込まないと即効性が期待できない気がしている。但し“過去の失敗”から自宅から荷物に詰め込んで持参する際は、絶対に焼酎が漏れない様にしている...。とりあえず“雰囲気のありそうな場所”にフルーツトラップを仕掛けていく。果たしてダイトウヒラタは来てくれるのだろうか?さらに幻のヒサマツサイカブトは興味を抱いてくれるのだろうか?・・・島全体で5つという離島採集者としては少な過ぎる数量を設置した。

注目のフルーツトラップを仕掛ける
注目のフルーツトラップを仕掛ける



フルーツトラップを仕掛け終わり、ひと段落着く頃には先程まで晴れていた青空がグレーになっていた。いつもながら離島の天気予報は、晴れと言っても必ずどこかで雨が降る。これが大海原の中に佇む孤島の宿命なのかも知れないが、最近は天気予報関係なく雨合羽を持ち歩く様にしている。

すぐに天候が変わる
すぐに天候が変わる


幸い雨は降って来ないのでそのまま探索を続けていくと、サトウキビの積み肥を発見した。状況的にヒサマツサイカブトを確認できるチャンスかと思い、近くに落ちている枝を使いサトウキビの積み肥を除けてみる事にした。

サイトウキビの積み肥を確認
サイトウキビの積み肥を確認



すると小さなコガネムシ系の幼虫が現われた!!「もしやっ!これが幻のヒサマツサイカブトの幼虫なのかっ!?」と一瞬驚いたが、少しすると同じ様な幼虫がボロボロと出てきた。「幻にしては数が多い...。」と思い、ふと溜め息をつくと、頭の上を何かが飛んできた。その物体をよく確認して見ると、、、シロテンハナムグリの様であった。暫く観ているとその個体はサトウキビの積み肥に着地した。・・・どうやらこの不明幼虫たちはハナムグリの幼虫の様であった。カブトムシの3齢幼虫並の大きさであったら可能性も高かったかも知れないが、“へっぽこ探索”である以上この程度であろう...。

不明幼虫?
不明幼虫?



その後も新たな発見が無いかレンタカーを走らせていると、島の所々で“線路の跡”と思われるレールの様なものが見受けられる。「確か沖縄で列車は走ってないはず...。」と感じたが、この時点では解らなかったが、・・・最終日にこの理由が解る事になる。

電車が走ってたの?
電車が走ってたの?



・・・気が付くと時刻は18時を回っているので、一度宿に戻り夕食を食べる事にした。離島の場合、しっかり食事の確保をしてないと“食いっぱぐれる”可能性もある。普段、東京では24時間営業のコンビニに頼りきっているので、“食事確保”はいつも以上に重要であり気を使う。




宿で食事を済ませた後は、いよいよ南大東島の外灯回りになる。ヒサマツサイカブトを確認する一番効率の良さそうな手段であり、またダイトウヒラタが外灯に集まってくるかを確認してみたかったので、昼間以上に期待が高まる!・・・とりあえずは市街地から確認していく事にする。

南大東島の外灯回り
南大東島の外灯回り



・・・市街地の外灯や自販機周辺を念入りに調べていく。・・・しかし、いきなり確認できると思ってないが、全く虫の気配が無い。光源の強い外灯辺りを確認しても蛾ですら、あまり飛んでいない様である。因みに月の状況は少し前に降った雨の名残で、曇っている様なので条件としては悪くは無いと感じる。


結局、外灯周りは島を2周程度行いながら確認していったが、クワガタはおろか甲虫の姿1つ見つける事は出来なかった...。外灯周りの合間に昼間に仕掛けたフルーツトラップも確認していくが、予想通りというか甲虫の姿は無く、ゴキや数種類のカタツムリに占領されているだけであった。

トラップ惨敗!!
トラップ惨敗!!




・・・初めての島での初日は、こんなものだろう。・・・雰囲気も感じられないこともあり、旅の疲れもあったので、早々に宿に戻り明日に備える事にした。



成績ダイトウマメ×3
(確認後、全てリリース)

2日日へ

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