ご注意!

2011年4月1日に種の保存法「国内希少野生動植物種」に指定され、ヨナグニマルバネクワガタ採集禁止となりました。下記、採集記は規制以前のものです。


2006.10.14(土)へっぽこ遠征in八重山列島(2日目)
沖縄県・与那国島 1:00PM 晴れ 28℃ (暑い)

与那国島遠征、2日目の朝。

昨晩は頑張ったが結果が伴わなかった。多少なりとも昨日の疲れは蓄積しているのが分かる。・・・要は体がダルイ。それでも今日は今日として、出来る事をして行きたい。バックの中から地図を取り出し眺める。狭い島なので大よその見当は付けられる。しかし地図を見るのは簡単だが、実際に“漆黒の闇”に入ると簡単ではなくなってしまう。それがド素人採集者の現状でもある。・・・朝からネガティブ指向ではいけない。気持ちを切り替え、「過去の変えられない事実より、どうにかなるかも知れない未来に賭けよう!」と深呼吸をする。

地図を見ながら考える
地図を見ながら考える



まずは一番確保が難しい昼食を探しに行く。与那国島には個人商店はそれなりに見掛けるのだが、何となく入り難いので唯一のスーパーに立ち寄る。・・・昨年は全く食事になる様な惣菜がなく、カップラーメンを購入しようと思ったが、お湯が無いので諦めた経緯を思い出す。飲み物は豊富に売っているので、それだけでも充分有り難いので入店する。

与那国で一番大きなスーパー
与那国で一番大きなスーパー



食べ物は正直な所、あまり期待していなかったが、何と今回は“おにぎり”を販売していた。普段、東京では殆ど買う事の無い“おにぎり”を最高の贅沢と感じながら購入する。本当に有り難い!・・・つくづく食べ物の有難みを感じる

食料は手に入り難い
食料は手に入り難い




時間帯もまだ午前中なので、サキシマヒラタを探してみたいと思い、ショウロウクサギやアカメガシワの樹を探す。色々と見回っていくと、樹はそれなりに確認できるが、大木はないので若い樹ばかりの確認となってしまう。とりあえずは、雰囲気のありそうな茂みを覗いて行く...。

ショウロウクサギを探す
ショウロウクサギを探す



暫く探索してみたが、クワガタの姿は確認できない。・・・居るのはキボシカミキリ?ばかりである。見た目はキボシだが場所柄、亜種扱いになっているのだろうか? 発生時期なのか個体数はかなり見掛けた。他にも茶色っぽい小さなカミキリは多く確認できた。・・・が、カミキリは全く判らないのでスルーして行く。

キボシカミキリ?は多い...
キボシカミキリ?は多い...



10月の“真夏の日差し”を受けながら暫く探索を続けたが、全くと言っても良いほど、クワガタの存在を確認する事が出来なかった。覚悟はしていながらも、現実の厳しさを改めて感じる。


何となく気分転換に「ヨナグニウマ」を観に行く事にした。馬の事も良く分からないが、通常の馬に比べると少し小さい印象を受ける。しかしその毛並みは大変美しく、近付いても全く動じず、辺りの風景の美しさも手伝ってか、ボーっと暫く眺めてしまった。噂では「この与那国島の中に“真っ白”なヨナグニウマが入りらしい。しかし、殆ど人前に現れないらしいので、もし見付けられた時には非常に運が良いらしい...。」と言う話を、昨晩の夕食時に隣のテーブルの女性が話していたのを思い出した。・・・それにしても心が洗われる様な風景だ。

与那国馬と美しい風景
ヨナグニウマと美しい風景



与那国島は本当に“長閑な島”だと感じる。・・・もし、現実のしがらみが無ければ、このまま住み着いても良いとさえ思える。

長閑な与那国島
長閑な与那国島



・・・しかし、あくまでも今この空間は“夢の空間”なのである。・・・だからこそ、悔いの無い夢を堪能したい。

巨大風車(比較対象は小屋)
巨大風車(比較対象は小屋)


仕切り直しとばかりに森へ入る。・・・昨年も気になったが“怪しいバケツ”が、森のそこら中に見掛ける事が出来る。その理由は「害虫対策」なのである。世の中、知らない事がまだまだ多い。

ウリミバエ不妊虫の放飼カゴ
ウリミバエ不妊虫の放飼カゴ



バケツ(籠)を覗いてみると「ウリミバエ(不妊虫)」の姿があった。昨年、与那国遠征を終えた後に「プロジェクトX」の単行本を読み直してみたら、この「ウリミバエ」の回があり興味深く読んでみたが、もの凄い繁殖力で、一度発生すると小さな島では瞬く間に野菜等の農作物が餌食になり、壊滅状態に陥ってしまうほどの脅威なのである。

ウリミバエ
ウリミバエ



その後、ミカン系の放置された畑を見つける。徳之島では多くの「トクノシマノコギリ」を確認できた際、「トクノシマヒラタ」も確認できた事から、この与那国島でも「サキシマヒラタ」が付いているのではないか?と思い、確認していく。与那国島で樹液の出ている場所を探すのは、かなり難しいと思われるので、少しでも可能性を感じれば行動に移した方が良いと思っていた。

・・・しかし、全くクワガタの姿は確認できなかった。

放置されたミカン畑を探索する
放置されたミカン畑を探索する




その後も場所を変えながら探索を続けていく。すると...。



「メェー!」



???



「何だ?」と思い、振り返ってみると何と小さなヤギが近寄ってきていた。・・・なんと言うか、いかにも長閑な島らしい“ゆるゆるインパクト”を感じてしまった。どこかの家畜なのかも知れないが、人見知りせずに平気で寄ってくる。可愛いヤツだ。勝手に名前を「ユキちゃん」と名づけてみた。・・・ハイジの観すぎか?

ヤギが寄って来た
ヤギが寄って来た


自分なりに探索をして見たが、日中にはサキシマヒラタを確認する事はできなかった。

・・・そうこうしている内に日は傾き、夕暮れを迎えてしまった。考えてみれば、日本最西端の島で見る夕焼けという事は、“日本で最後に日が沈む場所”という事になるのかも知れない。・・・改めて今晩に対して気合を入れ直す。

日本最西端の夕焼け
日本最西端の夕焼け




目星を付けて置いた場所に着く頃には、日が落ちてしまった。と、同時に辺りには夜の帳が下りはじめた。いよいよ“与那国島、最後の挑戦”が始まった。漆黒の闇の中で迷うか迷わないかは、自分の心と同じで迷って弱気になったら負けである。例え迷っても強気で前に進めば、「自分に納得が行く!」と思い込み、歩を進めていく事にした。

漆黒の闇へ
漆黒の闇へ



暫く探索していると黒い物体が目に入った。一瞬「まさか!」と感じたが、よく観るとサキシマヒラタ♀であった。しかし決して残念と言う訳ではなく、今回の与那国島遠征で初めてクワガタの姿が確認できたので、これはこれで満足している。ポジティブに考えれば「幸先が良い!」という事であろう。

与那国島・サキシマヒラタ♀
与那国島・サキシマヒラタ♀


・・・森に入り、かなりの時間が経過しただろう。時折、森の中で採集者であろう懐中電灯の光がチラチラと見え隠れする。察するに数名の採集者は入っているのだろう。心境としては「漆黒の森に他にも人が居る。」という安堵感の後に「ライバルは多い!」という感じである。考えてみれば、他の採集者は皆タフだと思う。自分の様に漆黒の闇が怖いという“ヘタレ心”は無いのだろうか? 自分の足りない部分として昨日も感じたが、この様な状況は精神的な鍛練の場として、度胸を付ける為にも自分にとっては大事なことなのかも知れない。

更に奥深くへ・・・
更に奥深くへ...




数時間、森の中で歩き回っていると段々と腹が減ってきた。一応というか、この様な展開をある程度想定していたので、簡単な食料(飲料)を持ち歩く様にしていた。食料として日持ちし、食べても腹持ちしそうな「魚肉ソーセージ」を持参していたので、休憩がてらにパクつく。・・・大げさに思われるかも知れないが、万が一に備えておいて損は無いと思っている。実際に今回も持参していて大正解であった。

夜食を食べる
夜食を食べる


昨日以上に森の中を探索している。その結果として、昨晩に見付けられなかったシイの樹もより多く確認している。・・・しかし、ヨナグニマルバネの姿は確認できない。“絶滅してしまうかも知れない”と言われているクワガタだから、「そんな簡単に見付かる訳がない」と感じながらも「だからこそ、高い壁だからこそ、自分自身との勝負!」と自身を奮い立たせ、更に森の奥へと歩を進めていく。

雰囲気の良いシイはあるが...
雰囲気の良いシイはあるが...


森に入ってどの位時間が経ったのだろう?気が付けば、数メートル先に行くにも“かなりの体力を消費しなければならない程”の深い藪漕ぎになってしまった。既に体力は消耗していながらも“目標”に向かってひたすら足を前に進めていく。“毒蛇が居ない”という最低限の状況を意識しながら深い闇を切り裂いていく。

全力で藪漕ぎを行なう
全力で藪漕ぎを行なう


・・・しかし、残念ながら今回もヨナグニマルバネを見付ける事は出来なかった。


与那国の森に入り、懐中電灯片手に4時間以上の探索を続けたが、遂にヨナグニマルバネに出会う事は無かった...。


・・・昨晩、森でお会いした爆走kozou.Aさんと行動を共にしていれば、結果は違っただろう。


「・・・・・。」


「これで良かったんだ!」


不思議とそう思えた。今の自分に背伸びせず、等身大で勝負しての内容なのだから仕方が無い。


・・・一度入ったら、出るのも大変な“漆黒の闇”を何とか抜け出し、レンタカーに戻る。

すると別の車も停まっており、こちらの存在を確認すると同時に、その車から1人の男性が降り、声を掛けてきた。当然こちらも挨拶する。その方の名はHIKOさんと言う。話をしてみると非常に紳士的な方で長野県の方であった。HIKOさんは今日から与那国入りされた様で、明日以降に本格的にヨナマル採集に入られると言う。それにしてもHIKOさんの持参されている35Wのライトは強烈だった!漆黒の闇での安全性を考えれば、自分も確実に手に入れておきたいアイテムだと感じた。・・・日本最西端の真夜中の山中で遭遇したHIKOさんとは、その後も暫くお互いの活動内容などを語り合った。与那国島最後の夜に良いお方と出会う事が出来て良かった。




・・・レンタカーに乗り宿に向かう。

結局、昨年に続き、今年も「結果」が出なかった。

・・・自分にとって、この「結果」という言い回しが“微妙”であるが、自分の場合、何度か言っているかも知れないが、決して“クワガタを持ち帰る事を目的としていない”ので、このニュアンスが難しい。だからと言って“クワガタを見付けられなくても良い”と言う訳でもない...。簡単に言えば“クワガタを見付けるまでが楽しい!”という表現がしっくり来るのかも知れない。・・・だとすれば、「与那国島まで来るリスクは高いだろう?」と思われるかも知れない。・・・やはり上手く表現できないが、現実としてこの与那国島に来ているのだから、それが事実なのだろう。

・・・自分に足りないものは、何なのだろう?



成績サキシマヒラタ♀×1
(確認後、リリース)

3日日へ

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