2013年10月1日、希少野生動植物の指定により、アマミマルバネクワガタとアマミシカクワガタとアマミミヤマクワガタは採集禁止となりました。詳細は、奄美市サイトにてご確認下さい。下記、採集記は規制以前のものです。 |
2006.09.09(土)へっぽこ遠征in奄美群島(2日目) 鹿児島県・奄美大島 11:00AM 晴れのち雨 32℃ (蒸し暑い) 奄美大島、2日目の朝。 天気予報では雨の予報になっていたが、窓のカーテンを開けてみると南国の太陽が燦々と輝いていた。南西諸島の場合、予報はあまりあてにならない気がするので、その時が晴れていればそれで良い。宿の朝食(珍しく野菜中心)を食べた後、身支度を整え出発する。
とりあえず昼間の下見やトラップの確認作業を行おうと山に向かう。・・・しかし思う様に走れない。理由は“島時間”な車が多い事である。どうも東京の人間(自分)はせっかちと言うか、渋滞に慣れてしまったせいか“少しでも早く目的地に行きたい”気持ちが強い。しかし島の車は「限られた島の中を急いでどうする?」とばかりに非常にスローな走りになっている。気分が良い時は「これが離島」と納得するが、気分が乗っていない時は「遅い!」と感じてしまう。・・・結局はエゴな訳で自分自身が出来ていない証拠なのかも知れない。“日々勉強中”の意識は常に持ち続けなければいけないと感じる。
その後も車を走らせているとヤギが目に入った。昨年も感じたが奄美大島にはヤギが多い。基本的には家畜だろうが、野生化した個体も場所によっては確認できる。・・・夜の山でいきなり林道に出てこられると本当に驚く。暗闇に光る眼が怖い!
標識というのもその島の特色を現す物の1つで、この奄美大島では“アマミノクロウサギ注意!”の標識を目にする。
暫く標高を上げて行く。今まで奄美大島では、あまり樹液の出ている場所を把握していなかったので、昼間に時間を掛けて樹液の出ている場所を探していく。すると今回はそれなりに樹液場所を確認できたので、夜に改めて足を運んでみようと思う。
暫く探索をしていると段々空が暗くなってきた。元々、天気予報では雨の予報だっただけに仕方が無いのだが、やはり雨は降らないに越した事はない。そうこうしている内にポツリポツリと雨が降って来た。・・・本降りになる前に探索を進めたい。
とりあえず昨日仕掛けたフルーツトラップを確認してみる。すると今回の遠征では最初となるスジブトヒラタ♀が付いていた。お約束ながら個体は小さいが、個人的には大きい小さいではなく、トラップに来てくれた事の方が嬉しい。
更に、近くの樹液の出ている場所を確認すると、何だか小さなクワガタが居るので「ネブト?」と思い、手にとってみる。
やはりアマミネブト♂であった。個人的にはこれも初確認なので嬉しい。南西諸島では、もっとネブトを確認しても良いのかも知れないが、なかなか生態を把握していない事もあって、見つける事が出来ない。その様な意味では、この個体の確認はかなり嬉しい。・・・それにしても小さい。
そうこうしている内に雨が降り出した。元々、天気予報では雨と言っていたので仕方が無い。「どうせ直ぐに止むだろう。」と思いながらも、いつも以上に低い雲を見て憂鬱になる。・・・とりあえず、フルーツトラップは雨が降っても良い様な場所に仕掛けた“つもり”なので、探索を続けていく。
暫くすると樹液の出ている場所があるので、近付いて良く確認してみる。するとヒラタらしきクワガタが、樹皮めくれの間に潜んでいるのが分かった。早速、掻き出し棒を手に格闘を開始する。
あまり難しくない状態だったので、決着は意外に早く着いた。やはりアマミヒラタ♂であった。今まで奄美大島では、樹液の出ているポイントを把握できていなかったが、この唐突に見つけた“樹液場”での確認に満足している。自分の採集課題は“いかにクワガタを自然体で確認できるか?”が重要なので、現地で樹液の出ている樹を見つけ、その上で奄美大島のクワガタを観る事が出来た事が嬉しい。
その他に個体はいないのか?と思い確認していくと、別の隙間に♀らしき個体が潜んでいた。見た感じ“前胸背板”の部分が、スジブトヒラタ♀の“つや消し”ではなく、アマミヒラタ♀の“つやピカ”の様に窺える。とりあえず掻き出し棒で格闘を始める。
取り出してみた個体を確認するとアマミヒラタ♀であった。独特な奄美特有の縦縞が入っており“奄美の神秘性”を感じる。奄美大島では、個人的にアマミヒラタよりもスジブトヒラタの方が多く目にするので、アマミヒラタを確認した時は少し得した気分になる。感覚としてはどちらも同じ場所で確認できるので、時期や運?にも左右されるのかも知れない。
・・・先程から降っていた雨は、とうとう本降り、、、いや土砂降りになってしまった。雨合羽を着てもちょっと難しいくらい激しい雨になってしまった。レンタカーのウィンドウを開け、樹の様子を確認しようと思っても大粒の雨が車内に入り込んでしまう。奄美大島の天気は変わりやすいのでポジティブに考え、暫く車の中で雨が止むのを待ちながら休憩する事にした。
・・・暫くすると、雨は大粒ながらも多少勢いが弱まったので探索を再開する。仕掛けておいたトラップを確認する。・・・すると小さなスジブトヒラタ♂が来ていた。今回のトラップ設置場所は“多少雨が降っても影になる場所”を想定して設置してみたのが良かったのかも知れない。おそらく昨夜から付いていた個体だと思われるが、この様な小さな個体であれば、場所によっては昼間でも集まっている事が多いので、やはり仕掛ける場所の選別も重要である事が窺える。
途中、体調が思わしくなく休憩を挟みながら探索を続けていると時刻は夕方になった。幸い天候は回復し、雨は上がった。こうなれば今夜もアマミミヤマ探索が出来るのでテンションが上がる。出来れば昨夜に探索できなかったアマミマルバネにも挑戦してみたい。・・・昼間に買い込んでおいた弁当を食べ、夕暮れまでにもう少し時間が掛かるので風邪薬を飲んでもう一休みする。
時間帯としては良い頃合かと思い、アマミミヤマ探索を行なう。昨晩同様に電柱を確認していくと、今回は別の場所で個体を確認できた。あまり期待していない場所だったので、少々驚きながらも長網を用意していく。
ネットインして確認してみるとアマミミヤマ♂であった。いつも以上に小さい個体であるが“へっぽこ”のタイミングに居てくれる事が有り難い。この後もアマミミヤマ♂を3頭確認した。昨日6頭のアマミミヤマ♂を確認した場所とは、随分はなれている場所だったが局所的ながらも、環境が整っている場所ではそれなりに生息数は多いのかも知れない。
その後、場所を変えながら探索を続けていくと、一台のレンタカーが通り過ぎていった。「他の採集者なんだろうなぁ。」と思っていると、その車は少し先で停まっていた。車を近づけると車内から1人の青年が出てきた。・・・そして「魔琴さんですよね?」と声を掛けてきた。 「何で俺の事知ってんだ?」と不思議に思い暗がりに中、青年の顔を良く見ると・・・、爆走kozou.Aさんであった。昨年の与那国島以来の再会である。しかも前回同様に南国の林道である。何も事前打ち合わせを行っていないにも拘らず、この様な極めて人と会いにくい場所で出会える事に不思議な縁を感じる。お互いの挨拶もそこそこに、爆走kozou.Aさんの採集状況を伺ってみると、流石である。すでにかなりのアマミマルバネを採集されていると言う。デジカメ画像を見せて頂くとアマミマルバネの数多くの個体が写っていた。(・・・とてもではないが、私の採集報告など出来るレベルではなかった。) そして爆走kozou.Aさんは、その後アマミマルバネ採集に行くと言う。しかもその採集にお誘いして頂ける事になった。 せっかくの機会でもあるし、おそらく“へっぽこ”的にはアマミマルバネ採集は厳しいと感じていたので、今回は採集を同行させて頂く事になった。爆走kozou.Aさんの車の後に続き、目的地へ移動する。
それなりに移動した場所に辿り付く。アマミマルバネと言えば“最凶最悪”という異名の付くクワガタ。・・・この3年間、奄美大島入りして機会があれば確認してみたいクワガタであったが、正直な所ハブが怖かった。なので、思い切って藪漕ぎをする事も出来ず、興味はありながらも“縁遠いクワガタ”であった。奄美大島の漆黒の闇は他の離島同様に、怪我や迷うなどの“遭難”プラス、猛毒蛇の“ハブの恐怖”を決して忘れてはならない。自分は、出来る限り明るい内に下見をした上で、夜に備えるようにしている。昼間は明るく迷うはずも無い場所でも、夜の帳が下りたジャングルでは全く違う世界になってしまう。
やはり奄美大島は、他の離島以上に緊張感が漂う。緊張をほぐす意味でも話をしながら歩を進める。・・・何故かウルトラマンの話になる。「ゾフィーのM87光線は“ミラクル87万度”の略だ!」とか「エースがウルトラサインを初めて出したのは、地底エージェント・ギロン人の罠にハマった時だ!」など、どうみても奄美大島のジャングル内で話す内容では無かった。 爆走kozou.Aさんはどんどん奥に入っていく。付いていくので精一杯だ。森に入り30分位した頃には、息も切れ体力消耗のピークが来た。元々風邪を引いていたとは言え、体調万全の状態であっても体力の無さを実感していただろう。途中で少し休憩を挟んでもらいながら、オジサンにペースを合わせてもらう。 ・・・情けない。 ・・・しかも 1時間ほどした頃に、事もあろうに私の懐中電灯の電池が切れ掛かってしまった。予備の電池は車の中に置いて来てしまったので、どうにもならない。もしこれが自分ひとりでの状態であれば、確実に“ダークゾーン”になるが、今回は爆走kozou.Aさんの予備のライトをお借りする事になり、事なきを得た。・・・それにしても“へっぽこ”ぶりを発揮してしまった。・・・本当に1人の場合は、ここまで奥には入って行かないだろうが、もし仮に1人での状態で懐中電灯の電池が切れてしまったら、私はウルトラサインを発する事が出来ないので、そのまま超獣の餌食になってしまうだろう...。
もはやジャングルに入り2時間ほど経ったのだろうか? 今、自分が立っている場所は既にどこなのか全く分からない。「・・・アマミマルバネ、ここまでしても確認できないのか?」と思うほど、崖を登ったり、谷を越えたりしながらジャングルの奥深くに入っていく。それでも簡単に行かない。そして常にハブの恐怖が付きまとう。体力の消耗や“ハブの恐怖”もあって「・・・もう諦めよう。」という気持ちが段々と強くなってくる。しかし爆走kozou.Aさんは「ここまで来たら是非アマミマルバネを観ましょう!価値観が変わりますよ!」と言う。・・・その通り、自分ひとりでは絶対にあり得ないシチュエーションなので、“最初で最後”になるかも知れないアマミマルバネ探索に改めて気合いを入れていく。
・・・暫く探索を続けていくと、爆走kozou.Aさんは「居たっ!!」と声を出す。急いで近付き、爆走氏が指差す方向を見る。そこにはアマミマルバネ♀がシイの大木に静止していた。・・・数時間、奄美大島の漆黒のジャングルを藪漕ぎし、やっとの思いをして目の前に現れた「アマミマルバネ」。初めて観るアマミマルバネのその姿に感動を覚える。
アマミマルバネ♀を手にとって良く観てみる。石垣島で観るヤエヤママルバネとは雰囲気が全く違う。一番の印象は“黒い”である。ヤエマルは光を当てるとワインレッドの様な赤い印象があるが、アマミマルバネは真っ黒である。爆走kozou.Aさんは「匂いを嗅いで見て下さい。マルバネ独特の匂いがしますよ!」と言う。言われる通り匂いを嗅いで見る。・・・確かに独特な匂いがする。シイの樹の成分か分からないが、この様な確認の仕方もあるものだと感心した。
結局、丸々4時間は“漆黒のジャングル”に入っていたが、確認できた個体はこの♀の個体×1頭のみであった。そして途中、1.5メートルはあろうかというハブにも遭遇し、いかにアマミマルマネ採集は困難を極めるか身を持って実感する事ができた。アマミマルバネとは、まさに“最凶最悪”に相応しいクワガタである。 しかも苦労した分、その姿を目にした時の充実感は、見た者を虜にしてしまう魔性があると感じる...。 ・・・ジャングルを出た頃には、来ているもの全てが汗まみれで、まるで”鎧を着ているかの様”に重くなっていた。それもあってか体中がダルイ。風邪の具合もあるが“鎧”を着ていた事で、体力の無い筋肉が悲鳴を上げている様であった。やはり日常生活の中でも、もっと体を鍛えなくてはいけないと感じた瞬間でもあった。 それにしても爆走kozou.Aさんのバイタリティは凄まじいものがある。この様な機会が無ければ、アマミマルバネを確認する事はできなかったかも知れないし、改めて爆走kozou.Aさんには感謝したい。 個人的にも昼間に樹液の出ている箇所で、アマミネブトやアマミヒラタ・スジブトヒラタを確認でき、夜間にはアマミミヤマも確認できたので“へっぽこ”としては充分に堪能した1日となった。
宿の戻った頃には深夜になっていたが、殆ど気絶に近い形で眠り込んでしまった...zzz 成績:アマミミヤマ♂×4 アマミマルバネ♀×1 スジブトヒラタ♂×2 ♀×1 アマミヒラタ♂×1 ♀×1 アマミネブト♂×1 (魔琴:アマミミヤマ♂×1 アマミヒラタ♂×1 ♀×1以外、最終日にリリース) |
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