2005.07.09(土)へっぽこ遠征in対馬列島(2日目)
長崎県・対馬 10:00AM 雨 26℃ (蒸し暑い)


対馬遠征、2日目の朝。

昨晩は寝ていても、雨音で何度か目が覚めるほど強烈な雨だった。現状として雨足は小康状態を保っている。宿の窓から裏山の様子を窺うと、今日も低い雲が山にかかっている。状況としては先月の沖永良部遠征より、数段悪い。7月中旬というと梅雨明けまで後一歩という感じだが、この時期こそ最も大雨が降りやすい状況でもある。ラジオで朝のニュースを聞いていると、対馬含む北九州地区は深刻な水害が出ている様だ。トラップを仕掛けた林道など、地盤が緩んでいる可能性が高いので注意が必要だ。

梅雨前線、停滞中
梅雨前線、停滞中




車を走らせ林道に入ると、至る所に土砂や枝が落ちている。おそらく昨晩の大雨で流れ出たものだろう。改めて昨晩の大雨の凄まじさを感じた。林道自体の通行止めは無かったので、何とかトラップを設置した場所までは来る事が出来た。とにかくトラップが気になり、確認してみる。・・・が、何も居ない。雨の影響もあるのかも知れないが、とりあえず他のトラップも確認していく事にした。

やはり来ない...
やはり来ない...



移動中、車外の風景に目をやると対馬の道は、深い山の尾根沿いを走ったり、海岸線を走ったりと“山と海の島”という印象を受ける。窓を開けるとニイニイゼミの鳴き声が聞こえ、その中に関東より早く発生しているツクツクホウシの鳴き声も聞こえる。自然の豊かな島と感じる。

山と海の島
山と海の島



車を走らせていると途中「ツシマヤマネコ」に関する看板を目にする。その名の通り、対馬のみに生息している野生の山猫(夜行性)で、現在は70〜90頭ほどしか生息していないらしい。山間部では夜間、交通事故での犠牲も多いらしく、その少ない種を守る為に至る所に看板が設置してある。しかし実際のルッキングといっても生息数の少なさもあって、そう簡単にはお目にかかれない様である。因みに量産型の猫(家猫)は多く、厄介な事に林道によく出没するので非常に紛らわしい。(模様で直ぐに分かる)

生息数は少ない
生息数は少ない



対馬はトンビが非常に多く、ちょっとした高台や電信柱の上にいるトンビを良く見掛ける。カラスも見掛けるが、トンビの方が多いと感じる。近くに寄るとカラスより大きい事もあって迫力がある。歩いているトカゲに目をつけ、急降下して獲物を仕留めた時の格好良さには感動した。

トンビが多い
トンビが多い




車でかなりの距離を走りながらフルーツトラップを見回る。仕掛けている場所自体に自信が持てないので、トラップを確認する瞬間の“不安と期待”の入り混じった感覚がなんとも言えない...。このトラップもそんな感じの中、確認してみるとカナブンが付いていた。クワガタでは無いので少々複雑な思いではあるが、カナブンが付いているという事は“効果”も出始めているのかもしれない。とりあえずは前進していると信じ、次の設置場所に向かうことにした。

初の客人
初の客人



車に戻る途中、地面に何か飛んでいるので目をやるとナミハンミョウが確認できた。この何ともいえない模様が美しい。近づいて捕獲しようとすると飛び立ち、少し離れた場所に降り立つ。また近づいて捕獲しようとすると、飛び立つ。バカにされている様で腹が立つ!・・・少々ムキになって走り回ったが結局、捕まえられなかった。・・・かなりの体力を消耗してしまった。・・・私がバカだった。

ナミハンミョウ
ナミハンミョウ



一通りフルーツトラップの設置箇所を回ったが、成果は出なかった。仕方ないので気分転換の意味で、「キンオニクワガタ」が生息していると言われている山に向かってみた。しかし、林道は徐々に狭くなり、昨晩の大雨のせいで土砂も流れ出ており、途中林道が水没している場所も出てきた。あまり無理はしたくないので、雰囲気だけ感じて戻る事にした。

キンオニの生息地(らしい)
キンオニの生息地(らしい)









 しかし、




この対馬にも悪夢がやって来た・・・


↓ダークゾーン↓

 林道は土砂や樹の枝などが散乱しており、非常に状態が悪い。


 悪路の続く帰り道に不安を感じる。

 「こんな所で沖永良部島みたいな事が起こったら、ヤバイよなぁ...。」

 不安がよぎる。

 昼間とはいえ、人通りの全く無いような場所なので、何かトラブルが発生したら堪らない...。


 辺りは昨日からの雨が降り続き、地盤も緩んでいるだろうし、道が浸水している場所もある。

 何だか怖くなってきたので、少しでも早くまともな道に戻りたくスピードを上げた瞬間...。




 
バンッ!!



 どうみても、気持ちの良い音ではなかった...。

 しかも

 すぐに車の異変に気が付いた。




 ・・・非常に嫌な予感がした。



 車を降りて確認してみると...。

ああああああああああああ
ああああああああああああ


 
パンクしていた...。


 一気にテンションが下がった。


 そうは言っても、このままでは走れないので、スペアタイヤと交換する...。


 一応、状況報告を兼ねてレンタカー屋に連絡を入れる事にした。


 
“圏外”だった...。





 タイヤ交換作業も終わり、慎重に下山した後、通話可能の場所からレンタカー屋に連絡を入れた。

 すると別の代車にしてくれるとの事であった。「まぁその方が残りの事を考えれば安心出来るだろう。」

 ・・・そして、聞きにくいが“ある事”を聞いてみた。


 「弁償ですか...?」と訊ねると...、


 「はい。8500円頂戴致します!」



 つくづく私はツイてない...。

↑ダークゾーン終了↑



昨日作成したトラップの残りがあるので、雰囲気のありそうな場所に仕掛けていく。とにかく可能性を信じて仕掛けるしかない。

トラップ箇所
トラップ箇所



途中、クヌギがあったので確認してみるとスジのペアが潜んでいた。とりあえず画像に収めようとフラッシュが光った瞬間、落下してしまった。ネブトだったら見つかるまで探したいところだったが、スジだったので必要以上に探さなかった。

スジペア
スジペア




レンタカー屋にて車を交換している内に辺りが暗くなり始めたので、他のトラップ確認をする事にした。まず1つ目のトラップへ行ってみると、何か黒い物体が付いている。スジ♂が来ていた!これは嬉しい。初めて“自前のフルーツトラップ”で成果が出た。常連の方々から見れば、笑われてしまう内容かも知れないが、“片顎の無い小さなスジ♂”であったが、手探り状態の中での結果は感動ものであった。

おお!!
おお!!



気を良くしてトラップ設置場所を巡回していくが、それ以降なかなか成果が出ない。やはり簡単には行かないと思い始めた頃、昼間にスジペアが潜んでいたクヌギに仕掛けたトラップに着いた。ライトを当ててみると何もいない...。とりあえずトラップの裏に何か居ないかと思い、トラップを除けてみると自分の目を疑う大きなツシマヒラタ♂が付いていた。トラップにしがみ付いていなかったので、決定的な画像が得られなかったが“自前トラップに来た!”と言って間違いないだろう。60_強の個体であったが、大顎の長さに“ツシマ”を感じた。やはりトラップの効果は出始めている。

いた〜〜〜〜っ!!
いた〜〜〜〜っ!!



辺りが暗くなって大分経ったので、外灯周りもする事にした。どちらかと言うと、トラップ設置場所から次のトラップ間の道のりにある外灯を確認していく形になる。対馬のクワガタは外灯に集まるのだろうか?

外灯回り開始
外灯回り開始



ある外灯で確認すると、地面に何やらうごめく物体がいるので懐中電灯を当ててみる。マイマイカブリらしき個体が居る。どうやら「ツシマカブリモドキ」と言う虫らしい。マニアの方には人気のある虫の様である。本土で良く見掛ける“黒くて臭い”マイマイカブリと違って美しい色をしている。傷ついた個体の様であったが、しばらく見ていると草陰に消えていった。・・・ところで「モドキ」が付くので、本当のマイマイカブリではないのだろうか?

ツシマカブリモドキ
ツシマカブリモドキ



いくつか外灯を回ってみたが、なかなかクワガタの姿が確認できない。しばらく探し、やっと確認できたのがノコの亡骸であった。どうやら外灯に飛来した後に、別の動物に襲われたのかも知れない。結局、外灯周りではこれ以上の確認は出来なかった。

ノコ♂の亡骸
ノコ♂の亡骸



昼間にスズメバチが来ていた樹液の近くを通りがかったので、確認してみるとカブトムシ♂が来ていた。よくよく考えてみると沖永良部島でタイワンカブトを確認して以来、通常のカブトムシは2005年初確認となる。遅すぎだろう...。実はこのカブトムシが居る数メートル上にいくつか洞があり、光を当ててみると数頭のクワガタが洞に駆け込んでいった。地上5メートルほどの高さで、どうする事も出来なかったので諦めた。

対馬・カブトムシ♂
対馬・カブトムシ♂


ある程度トラップ&外灯確認も行い、時計を見ると23時を回っている。最後にもう1箇所だけトラップを確認しておこうと思い、一番可能性の高そうな場所にやって来た。と、いっても絶対的な自信があった訳ではないので、何か居ればラッキー程度に懐中電灯を照らしてみる。・・・すると黒くて大きな塊がトラップに付いている! ドキッとした。とりあえず一度、懐中電灯のスイッチを切り気持ちの準備をする事にした。自問自答する...。

「なんか黒いモンがいっぱい付いていたけど、ゴキちゃんかな???」

しかし、それがクワガタである事は確信していた。ただ、今までの流れでは“考えられない”状況だったので、その光景に戸惑っていた...。深呼吸し、意を決して懐中電灯を照らしてみる。

そこには無数のツシマヒラタがトラップに集っていた。

本当に???
本当に???



ライトを当てられ逃げ出すツシマヒラタ達。光には敏感に反応している。トラップに付いていたツシマヒラタは次々に隠れ始めた。無理に捕獲しようと思わなかったので、しばらくその様子を窺っていた。・・・なんと言うか、“自前トラップ満員御礼”の余韻を楽しみたかった。

来てる!!
来てる!!



上記トラップの逆サイドを見ると、これまたツシマヒラタ♂がトラップに張り付いている。しかも一番得たかった“自前トラップを抱きかかえる画像”であった。他の個体が光を嫌い逃げ回る中で、悠々とトラップを楽しんでいる個体に恐れ入った。得たい画像といっても、トラップを設置した段階で“自然体の画像”とは言えないが、現地のクワガタを確認する手段として、また生態を確認する手段として、この光景を見てみたかった。本当に嬉しい!

決定的瞬間!!
決定的瞬間!!



このトラップで数多くのツシマヒラタを確認する中で、ふと疑問が過ぎった。確か最初に懐中電灯を照らした際、かなり大きな物体が見えた気がしたが、それは今確認している個体より遥かに大きなシルエットに見えていた。・・・と、言う事は確認している以外に、隠れている個体がいるのではと思い、トラップ周辺を確認してみると...。

とてつもなく大きな個体が樹皮下に潜んでいた。おそらく最初に懐中電灯で照らした際に見掛けた個体であろう。そして、いち早く樹皮下に隠れたと思われる。それにしても1つひとつパーツの造りが、“へっぽこ”にとっては考えられないほど大きい。幸い樹皮穴は比較的浅く、掻き出し棒で意外に早く取り出せたが、それにしても力強い抵抗であった。

ボス発見!!
ボス発見!!



とりあえずルアーケースに捕獲してみた。するとこのフルーツトラップ1本に集まった個体は、ツシマヒラタ♂×5頭 ♀×1頭、コクワ♀×1頭という結果になった。まさかこれほど集まるとは思ってもいなかったので、嬉しい以上に驚きであった。

1つのトラップでの成果。
1つのトラップでの成果。



最後に確認したボスの大きさをノギスで測ってみた。何と71_あった。もちろんギネスと称される個体はもっと大きいのだろうが、この71_という個体は“へっぽこ”にとって無限の大きさに感じる。

夢を見ているのだろう・・・
夢を見ているのだろう...




本日は最後の最後で大きな成果が出た。しかも非常に勉強になった点もあった。ツシマヒラタが多く集まっていたトラップ以外にも、数メートル間隔で3つトラップを仕掛けたのだが、それには全く集まらず、このトラップのみに多くの個体が集まっていたのである。自分のトラップ作成の場合、ストッキングの中には1本のバナナしか入れてなかったが、実はこのトラップのみ2本のバナナを入れていた。これだけで判断できないかも知れないが、書物でも記載されている様に、やはりストッキングに2〜3本は必要の様である。トラップとして風味などの持続性に大きく影響があるのかも知れない。それでも今まで失敗を繰り返しながら、少しずつであるが前進していると感じる。

レンタカーの「走行距離メーター」を見ると1日で350km走っていた。良くも悪くも対馬を堪能できた1日となった。



成績ツシマヒラタ♂×6 ♀×1 スジ♂×2 ♀×1 コクワ♂×1 ♀×1 カブトムシ♂×1
(確認後、3日目に全てリリース)

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