2013.12.15(日)へっぽこ遠征inタイ王国(4日目)
何が起こったのだろうと不思議に思いドアを開けてみると、うしやんさんが興奮気味に「ヨナグニサンがおる!」と言っている。寝起きという事もあり「与那国島の話を何でタイ王国でしているのだろう...?」と寝ぼけ眼で考えたのだが、話をしているうちに状況が見えてきた。
タイ王国にもヨナグニサンは生息していて、昨晩のうちに宿の明かりに飛来した個体が屋根のひさしで休んでいた。
状況が把握出たので私もカメラを用意して画像を得る。うしやんさんも脚立を構え良いアングルを狙っている。
撮影を終えうしやんさんがヨナグニサンを手にとってみると、夜行性という事もあり昼間はおとなしく、うしやんさんが手に乗せても羽ばたく様なことはなかった。それにしても巨大過ぎる...。与那国島遠征時はフィールド上でヨナグニサンを確認することは無かったが、まさかタイ王国でモスラに会えるとは思わなかった。暫くうしやんさんの手に乗っていたが、その内ヒラヒラと森の方へ飛んで行ってしまった。
身支度を整え、宿をチェックアウトする。明るい時間帯に確認してみると改めて感じるのだが、ここの宿は施設内でも充分にライトトラップが可能な場所であり、裏山からコーカサスオオカブトやテナガコガネも飛来するポイントなのである。
昨日確認したオニツヤをリリースする。宿の敷地内にてこれだけのクワガタ達が確認できるのはタイ王国ならではであろう。
うしやんさんが目的地に向かって車を走らせる。最終日なのであまり時間は取れないのだが、可能な限り探索を行いたいと思う。
途中、少し前に車に撥ねられたヘビの亡骸が道に転がってた。見たこともないヘビであった...。
いつもの場所を通過する。この場所も毎回通るたびに写真を撮りたくなる。
林道を抜けて、目的地の「ご神木」に到着する。やはり車を降りる瞬間のワクワク感が楽しい。
この数日、数頭のクワガタが潜んでいた樹皮めくれをチェックしてみるが、今日は何も確認できなかった..。
その他の洞や樹液場を確認してみたがクワガタの姿は確認できなかったのだが、足元を見るとモウホパーツが落ちている。全体的にシーズンの終わりを告げているのだろうが、落ちているパーツが確認できるだけでも充分雰囲気は感じられる。
他にはギラファパーツも確認できた。昨年は12月でも活動を確認できたが、今年は終わってしまった様である。7月から10月くらいまでは個体数は多い様であるが、またの機会があれば確認してみたい。
落ちているパーツを組み合わせて、こういうお遊びをしていた方が居たらい...。いきなりこの状態で落ちていたら誰でも驚くと思う。
「ご神木」での探索を終了として、この遠征中に確認したクワガタを全てリリースする。よく「遠くまで行ったのに捕まえたクワガタをリリースするとは、もったいない...。」と言われるのだが、国内の離島遠征や海外遠征であっても、やっぱり今の自分は現地でクワガタの姿が確認できて採集記用の写真が撮れれば、それで満足なのである。採集者としては永遠のハンパ者であろうが、自分はそれで良いと思っている。
・・・「ご神木」に感謝し、林道を後にする。
夜には日本の帰国便に搭乗するので、場所をバンコク都方面に向かって移動する。毎回、長距離運転をして下さるうしやんさんに恐縮する限りである。毎回、移動中はお互いの人生観などを語り合う、非常に有意義な時間となっている。クワガタ探索だけではなく、この会話の時間もタイ王国遠征の大きな理由になっている。
昼食の時間なので道路沿いの店に立ち寄る。毎回「カーオ・カー・ムー(豚足めし)」は食べていたが、最近「カーオ・マン・ガイ(蒸し鶏のせ飯)」は食べてなかったので、久々にオーダーしてみる。日本でもそうであるが、同じ料理であっても店によってずいぶん完成度は異なる。
タイ王国の食事中、毎回に気になっていたのが、爪楊枝の両端が尖っている事である。日本は片側だけ尖っているのが通常だが、タイ王国ではこのタイプが主流である。
食事後、再び車を走らせる。大きな交差点で信号待ちをすると、必ずと言って良いほど花売りが停車中の車を縫ってくる。見た感じそれほど儲かる商売には見えないのだが、タイ王国らしい光景であり、信号待ち時には花売りの存在を意識してしまう。
・・・走ること数時間。 目的地に到着する。今回最後の探索場所であり、4年前の第1回タイ王国時にも足を運んだポイントになる。ここは私が初めてチェリフェルネブトを確認した場所であり、4年振りに訪れてみたが雰囲気はそのままであった。
近付いてみると洞から樹液がだらだら流れ出ている。大物が潜んで居そうな雰囲気が感じられる。
洞の周辺をチェックしてみると大きなチェリフェルネブト♂が確認できた。すぐにデジカメのシャッターを切る。
日本の小さなネブトと違ってチェリフェルネブトは大型個体になると、日本のオオクワの様な貫禄がある。最後にタイ王国らしいクワガタを確認できて良かった。感謝しつつ即リリースする。
私がチェリフェルネブトの撮影を終え周辺を見渡すと、うしやんさんが小さなタマムシの撮影をされている。近付き確認してみると、「これがタマムシなのか?」と思うほど小さな甲虫が葉の上に佇んでいた。
この山は寺院と繋がっているので、至る場所で仏像の姿が確認できる。本日はもう少し奥へ入ってみることにする。
「大きな鳥がいるなぁ...。」と思ったら孔雀であった。この孔雀、私の姿を見るなり大きな羽を広げた。まさにジュディ・オングよろしくの「Wind is blowing from the Aegean...」が頭の中をよぎる。・・・横にいるうしやんさんは同じフレーズを口ずさんでいた。
林道を進んでいく。・・・何か足元で妙な殺気の様なものを感じたので目をやると、キングコブラが佇んでいた。おもわず声が出るほど驚いてしまった。うしやんさんは大笑いしている...。タイ王国というアメージングな場所に居るので“何が出てもおかしくない状況”であるが、落ち着いてよく見れば“像”であった...。因みに孔雀は神経毒に耐性がある様でコブラの天敵らしい。先程、孔雀を見ているだけにリアルな焦りを感じてしまった...。
林道にクワガタの姿は確認できなかったので、車を停車してある場所まで戻る。この周辺は4年前にテングビワハゴロモを確認したことがあったので、樹をチェックしてみると数頭のそれらしき個体が見える。
近付いて確認してみると、やはりテングビワハゴロモだった。樹を見渡すと結構な個体数が確認できる。4年振りという事もあり、懐かしさすら感じる。ちなみに素手で捕まえようとしても、寸前のところで必ず強力な後ろ脚で飛び去ってしまい、網がないと捕獲は難しい。
テングビワハゴロモの樹の周辺に小さな水溜めがあるので、何気なく覗き込んでみると、昨年12月に確認した中型のゲンゴロウ2種がここでも確認する事が出来た。昨年の確認時もそうであったが、このクラス(ハイイロゲンゴロウ位の大きさ)のゲンゴロウは大きな沼や溜池よりも1メートル四方の水溜めの方が確認しやすい気がする。今年もタイ王国のゲンゴロウの姿が確認できて良かった。
そろそろ帰国便の時間の関係上、バンコク都へと戻らないといけない。車に乗り道を進む。途中、道路脇に様々な仏像などが確認できたり、驚いたのは民家の軒先でネットを張りセパタクローを楽しむ若者の姿も見ることが出来た。改めてタイ王国らしい良さを感じる。
タイ王国でどこでも目にするのは、ラーマ9世(プーミポン アドゥンラヤデート国王)に敬意を表する装飾された額をよく目にする。一般の民家でも同様に国旗なども多く掲げられており、国民性がよく出てると思う。
うしやんさん宅の近くに“美味しい春巻き”が食べられるというので、タイ王国最後の夕食を迷わずそこに決めた。まずはビールで乾杯。日本では驚くかもしれないが、ここタイ王国ではビールに氷が入っている事は珍しい事ではないらしく、どの店でも普通に氷を入れてるのを目にする。
オーダーした春巻きが運ばれてきた。こちらでは「ポピア・トート」と呼ばれている様子である。とにかく食べてみる。・・・もの凄く美味しい!日本で馴染みのある春巻きは、中の具が野菜中心であるが、こちらは肉が中心なので感覚的には“つくねを皮で巻いて揚げた様な春巻き”に感じる。とまらない美味さである。
次に豚の揚げ物が運ばれてきたのだが、これも最高に美味しい。酒飲みには最高の一品になるであろう。私は最近、酒は抑え気味であるが、白いご飯があれば惣菜として充分に成立する美味しさである。
・・・楽しい時間はあっという間に過ぎていく。 日本に帰る便の時間になってしまい、スワンナプーム空港まで送っていただく。スワンナプーム空港は青を貴重とした美しい空港であるが、この青色を見ると遠征初日は希望を感じ、最終日は寂しさを連想させてくれる。
いつも通り出国ゲートまでうしやんさんは見送りに来てくださる。今まで年に3回は遠征していたタイ王国であったが、今回は1年ものブランクが空いてしまった。それでも改めて声を掛けてくださり今回の遠征が実現したのもうしやんさんのお蔭である。この第11回タイ王国遠征も会心に近い楽しい旅となった。今回の遠征中、うしやんさんはこのタイ王国で親しくなった「元たま」の知久寿焼さんのお話をしてくださったが、この数年でうしやんさんを訪ねてこのタイ王国に足を運ばれた有名人・研究者の数は少なくない。タイ王国というアメージングでミステリアルな場所というだけではなく、うしやんさんのお人柄がよりそうさせているのだと強く感じる。実際、私もうしやんさんでなければ11回も海外であるタイ王国に足を運んでないと思う。うしやんさんにはご本人なりにタイ王国に在住する経緯やご苦労もあるはずなのに、それを全く感じさせない。それどころか全ての環境を楽しみ、周りの人を引き寄せるお人柄に感服する限りである。私は本当に良い方に巡り合うことが出来た。改めてうしやんさんに大感謝申し上げたい。
・・・タイ王国、最高!! 成績:チェリフェルネブト♂×1 (確認後、リリース)
・・・スワンナプーム空港を夜中の24時過ぎに出発する。日本に帰国する時間は早朝になるので、可能な限り寝ておきたい。幸いにして3席あるシートの真ん中で左右に客が座らなかったので、3席分楽に座ることが出来た。長時間のフライトになるのでこれは大きい。今回の遠征は今までの中でも指折りの楽しさだったので、心にもゆとりがあり最高に気分が良い。・・・いつしか意識は夢の中へと消えていった。
・・・タイ王国を発って5時間で成田空港に到着する。気温は限りなく0℃に近い。数時間前まで30℃の世界に居たので寒さが身に凍みる。この気温差が海外遠征した事を実感させてくれる。今日は日付が変わってもう月曜日の早朝である。一度帰宅してから仕事に出勤しなければならない。いつもは現実に戻る重い瞬間なのだが、今回は不思議と気分が軽く感じる。良い旅であった証であろう。
・・・入国審査を受け、京成線に乗り東京に戻る。 ・・・2013年師走の生活が始まる。 |
嗚呼、2014年のタイ王国遠征が待ち遠しい・・・。 |