2012.10.06(土) 広島県・東部 10:00AM 曇り 24℃ 同行者:身内 7月に行った広島遠征でナミゲンゴロウの可能性を感じる溜池を確認していたので、稲刈りの終わる10月に改めて遠征を試みた。実際は昨年から気になっていた溜池であり、広島に住む身内と何度か打ち合わせを行いながら今日を迎えた。今回の本気度は、かなり高めで“未だ見ぬ”ナミゲンゴロウにアプローチしてみたいと思っている。
市内を抜け身内の山を目指す。広島市内からだと、かなりの距離を移動するのだが、その移動中もナミゲンゴロウへのイメージを膨らませながら車を進める。
・・・広島市内から数時間車を走らせ目的地に到着。驚いた事にミンミンゼミの鳴き声が聞こえる。夏の鳴き声と違いスローテンポな鳴き声になっている。まさか10月に入ってミンミンゼミの活動が確認できるとは思わなかった。とりあえず身内は所有する山に畑仕事で入っているので、連絡を入れ合流する。それにしても周辺の“田舎ぶり”に癒される。・・・ふと畑に設置してある進入防止ネットを見ると、カブトムシ♀が引っ掛かって亡骸になっている。
身内は畑になっている「あけび」を山ほど持ってきた。畑の樹を見上げると沢山あけびが生っているのが確認できる。
きのこ畑を覗いてみると「なめたけ」が確認できる。
「ひらたけ」も確認できる。樹の菌糸具合が良く、周辺に転がっている材には、クワガタの幼虫が入ってそうな雰囲気を感じるが、もちろん手は出さない。
本日の本題のナミゲンゴロウ探索を開始する。水生昆虫用の網でガサゴソする以外に今回はトラップも試みる事にした。トラップ製作も一般的な手法で、ペットボトルの頭を切って、それをひっくり返し本体に突っ込む。この時、誘き寄せる餌として鮮魚などを入れておく。最後にもうひと手間入れて完成。・・・果たしてこのトラップにナミゲンゴロウは来てくれるのだろうか?
いよいよ昨年から目星をつけていた溜池に向かう。“採集”という視点で見れば色々と遠回りをしているのかも知れないが、個人的に“探索”として見れば合理的なものより、自身の感性を試しているという感覚の方が楽しい。
目標としていた溜池に到着。水草も多く茂っており、雰囲気は最高だと感じる。昨年から想いを馳せていた場所だけに期待も膨らむ。多くのトンボも飛んでいて、ギンヤンマ♂が縄張りを張っているのだが、今まで見てきた中でもダントツに大きなギンヤンマ♂が飛行している。なかなか近付いてこないので断定は出来ないが、尾部の長さと黒さから見てオオギンヤンマの可能性も感じる。時期的に台風も来ているので“迷入種”と呼ばれるオオギンヤンマが広島に居る可能性はあるのかも知れない...。
とりあえず岸辺付近の水草をカサゴソやってみる。すると大量のマツモムシとガムシがネットインした。やはり水草の多い溜池は雰囲気が違う。
・・・とりあえず溜池にゲンゴロウ用のトラップを仕掛け、一旦溜池を後にする...。
次に向かったのは、毎年大きなヒラタが集まっている“ご神木”。今年7月も数頭のヒラタを確認している、ここも現時点で一番可能性の高い樹液場である。時期的にクワガタの確認は厳しいかも知れないが、樹液部をチェックしてみる。
すると樹液の出は悪くなっているものの、僅かに樹液は出ておりクワガタの姿も確認できる。
別の隙間にもクワガタの姿を確認する事が出来る。この場所ではヒラタとスジしか見たこと無いので、おそらくスジだと思われるが、一応確認のため掻き出し棒にて個体を引っ張り出してみる。
やはり確認できたクワガタは全てスジであった。残念ながらすでにヒラタの姿は消えていたのだが、10月という時期的にも広島という場所的にも嬉しい確認となった。確認した個体はすぐにリリースする。
身内と共に別の溜池に移動する。気が付いてなかったのだが身内の山の周辺には、こういった溜池が数多く存在する。やはり田んぼがある場所には、どこかしらの高台に溜池が存在する。今回の確認は今後の活動にも大いに役立つであろう。
この溜池でもゲンゴロウ用のトラップを池に沈める。数時間後、何かしらの成果に期待したい...。
・・・ここで身内は畑仕事があるので、一旦別れる事にした。
今回も身内の山もしくは、その知り合いのフィールドにて許可をもらい探索を行っている。普段であれば人目が気になる所でも、許可をもらっているので気が楽である。まずは田んぼ脇の”ひよせ”をチェックしていく。広島のこの周辺では“よこて”や“よこせ”などと呼ばれている。
7月の探索時は多くの生き物を確認できた“よこて”も稲刈りが終わった後だと、水路の水も抜かれており、生き物の雰囲気が感じられない。時期的に良い頃合いかと思われたが、田んぼの水が抜かれた状況では大物の確認は難しい様に感じた。それでも網をガサゴソやってみるとギンヤンマらしき大きなヤゴが入った..。
同様にアカハライモリも確認できる。7月は小さな幼生がいくつも確認できたが、今回は成長したアカハライモリが確認できた。
水場は限られているものの、深みのある場所を狙って網を入れてみると多くのコオイムシが確認できた。可能であればタガメやタイコウチも確認してみたかったが、今後の楽しみとして取っておきたい。確認したコオイムシはすぐにリリースする。
辺りが暗くなり始めたので、水場という場所柄あまり遅くはなりたくなかったので、“一番可能性を感じている”トラップに向うことにした...。
・・・暗くなる林道を急ぎ、溜池に到着。 「居ないだろうなぁ...。」と思いつつもトラップの紐を手繰り寄せる。暗くなった林の中でイマイチ分からないのだが、トラップ内に黒い物体が確認できる。「もしかして!」と期待しながらもガムシなどの場合、残念すぎる...と思い、確実に確認できる手元まで気持ちを抑える。 手元まで手繰り寄せたトラップの中を覗いてみる...。“黄色い縁取りの大きなゲンゴロウ”がガサガサと動いている...。 夢にまで見たナミゲンゴロウだった...。ナミゲンだと判った瞬間「ゲンゴロウだっ!!」と夜の帳が下り始めた林の中で叫んでしまった。
とりあえずタッパーに入れて観察してみる。トラップには、ナミゲンゴロウ♂×1頭、♀×3頭、さらにクロゲンゴロウも1頭入っていた。オオゲンゴロウとも呼ばれる事もあって、ガムシより大きな体格でありながら素早い水泳力に魅入ってしまう。
ゲンゴロウは前脚の特徴ですぐに♂♀判別できる。・・・ナミゲンゴロウ♀を1頭、手に取ってみる。すると個体から青白い液が出てきた。身を守る手段ともいわれている液体であるが、一言でいえば臭い..。しかしこの臭いこそナミゲンゴロウを確認できた証であろう。・・・本当に嬉しい。齢40にして初めて天然個体を確認する事が出来た。
近くの畑で仕事をしていた身内に連絡し、ナミゲンゴロウを見せてみる。昔は良く見掛けたらしいが、最近は全く見掛けなくなったと言う。今回は運良くナミゲンゴロウを確認できたが、やはり生息数は少ないと思われ、周辺の似た様な溜池では全く確認できないなど、やはり個体の確認は容易でない事が窺える。
本日の探索はクワガタがメインでは無かったが、それでも10月という時期にスジを確認できたことも嬉しかった。そして“生涯初”となるナミゲンゴロウの天然個体を確認できた事は、夢が叶った瞬間であり、今日という日は一生忘れられない探索となった。 成績:スジ♂×2 ♀×2 (ナミゲンゴロウ♂×1 ♀×3) (確認後、スジは全て即リリース。ナミゲンゴロウは翌日リリース) |