2008.07.26(土)
東北地方 11:00AM 曇り 29℃ 同行者:r.matsudaさん

昨年の石垣島遠征以来、r.matsudaさんとご一緒させて頂く事になった。有り難いことに私が“ライトトラップを経験した事がない”という事で、声を掛けて下さった。専用の機材などを必要とする為、なかなか個人的に出来そうな気がしてなかっただけに非常に有り難いと共に、初めてのライトトラップがr.matsudaさんというのは本当に嬉しい。事前に打ち合わせをさせて頂き緊張の中、当日を迎えた。・・・都内某所にて待ち合わせをした後、東北を目指した。




・・・数時間後に目的地に到着。周辺は深い山に覆われ非常に雰囲気を感じる。

東北の山
東北の山



早速r.matsudaさんはライトトラップのセッティングに取り掛かる。何しろ“へっぽこ”にとっては“生まれて初めてのライトトラップ”なので、機材そのもを間近で見る事が出来るだけでワクワクしてしまう。・・・とりあえず、r.matsudaさんの邪魔にならない様にお手伝いをする。ある程度のセッティングの目処が付くと、あとは“夕暮れまで待つのみ”である。

・・・時間としてはまだ夕暮れ時まで結構時間があるので、車の中で昼寝をして時を待つ事にした。

暫く昼寝する
暫く昼寝する



横になりながら勝手に点灯後の想像をしてしまう...。「あのヤナギからミヤマが飛んでくるのかなぁ?あの広葉樹から幻の...。」完全に子供に戻ったかの様な“遠足前夜”の様な気持ちで意識が遠のいでいった...zzz

あのヤナギから飛ぶかな?
あのヤナギから飛ぶかな?



...zzz




・・・数時間後、仮眠から覚めるとほど良い時間になっていたので最終セッティングに取り掛かる。こうやってライトを見ると「どこかで見た記憶があるなぁ...。」と思っていたら、対馬のイカ釣り漁船のライトと同じ様な物だと思い出した。確かに明かりで“誘き寄せる”という部分では同じ原理かも知れない。私も「重いものくらい運ばなくては...。」と思い、発電機などを運んでみる。この様な機材も初めて間近で見る事が出来るので、非常に勉強になる。本当r.matsudaさんに大感謝である。

セッティング再開
セッティング再開



セッティングが全て終了する頃には、間もなく夕暮れといった感じで、ほど良い緊張感が漂う。この様な新鮮さは久々に感じる。

間もなく夕暮れ
間もなく夕暮れ


そしてr.matsudaさんが発電機の電源を入れると同時に、ライトにも命が宿ったかの様に光が灯った。いよいよ開始である!少し離れた場所でライトトラップを眺めてみると青白いライトが、何とも言えない神秘的な光を放っている。白い布地にはまだ何も飛来してないが、このあと一体何が飛来するのであろうか?既にテンションが上りまくりである!何というか、虫より先に“へっぽこ”が神秘的な光に吸い寄せられそうになってしまうが、それほど魔法の様な印象を受けてしまう。

シャイニング・ブルー
シャイニング・ブルー



点灯を開始して1分ほどで、既に羽虫が集まりだしている。それだけ即効性があるのだろう。

すぐに羽虫が集まってきた
すぐに羽虫が集まってきた



・・・何かが布地に停まったので良く見ると、コガネムシが飛来していた。甲虫第一号である。何だか嬉しくなってくる。

初甲虫の飛来
初甲虫の飛来



そして数分後、黒い塊が見えたので「クワガタか!?」とトキメいたが、r.matsudaさん曰く「ノコギリカミキリは最初に飛んでくる紛らわしいヤツです!」と言う。確かにこのカミキリは飛んだり落ちたりの繰り返しを行うので、地面に落下するたびに「クワガタが来たのか!?」と錯覚してしまう。

驚いたノコギリカミキリ
驚いたノコギリカミキリ



少しすると蛾の飛来が増えてきた。r.matsudaさんが、まずは近場の草木に隠れていた蛾などが飛来し、その後に光の届く遠方の虫が飛来してくると言う。飛来した蛾はライトの回りを飛び回った後は、白地の布に張り付いていく。

張り付いていく
張り付いていく



急に大型の虫が飛来したので目をやるとヘビトンボであった。・・・正直あまり気持ちの良い虫には感じられない。

ヘビトンボ
ヘビトンボ



その頃には何故かアカトンボも飛来し始め、次々に布に張り付いていく。

ホントのトンボ
ホントのトンボ



ヒグラシも飛来する。数頭飛んできたのだが、♂は鳴きながらのた打ち回るので少々目障りな印象を受ける。・・・考えてみると普段ヒグラシを捕まえ様としても簡単には捕獲できないが“向こうから飛んで来る”というのは、やはり特別な採集方法だと感じる。

ヒグラシも飛来
ヒグラシも飛来



r.matsudaさんが時計を見ながら「そろそろ来ますよ。」と言う。私は「そんな分単位で分かるのですか?」と伺うと「大体飛来する時刻やタイミングは決まってるんです。」と仰る。流石r.matsudaさんの職人的感覚とライトトラップのキャリアを感じてしまった。

そろそろらしい
そろそろらしい



そして“そろそろ”のタイミング通り甲虫が飛来する。r.matsudaさんが「来ました!」と言うので、指差す方向を見るとクワガタ♀が落下して引っくり返っている。近付いて確認してみるとノコ♀であった。とにかくライトトラップ“飛来1号”なのでインパクトがある。すぐに撮影会が始まる。

初飛来ノコ♀
初飛来ノコ♀



r.matsudaさんが「このあとドンドン来ますよ!」という言葉通り、続いてコクワ♀が飛来する。

続いてコクワ♀も飛来
続いてコクワ♀も飛来



そしてミヤマ♀も飛来した。個人的に凄く嬉しい!

ミヤマ♀もやって来た!
ミヤマ♀もやって来た!



クワガタの飛来も増えたが、蛾の飛来数もハンパなく増え続ける。

蛾はどんどん増えていく
蛾はどんどん増えていく



r.matsudaさんが「♂来ましたよ!」と言う。インパクトあるシルエットが浮かぶ!

来ましたよ!
来ましたよ!



近付いてミヤマ♂を撮影する。ますます楽しくなってきた!既に夢の様な一時に感じる。

ミヤマ♂も飛来
ミヤマ♂も飛来



・・・この頃になると、ますます他の虫も数多く飛来する。先ほどのヒグラシ同様、ニイニイゼミも♂が鳴きながら飛び回る。

煩いニイニイゼミ♂
煩いニイニイゼミ♂



r.matsudaさんが「やっと来た...」と言うので確認してみると、アカアシ♀であった。本来であれば、もっと早い段階にアカアシが多く飛来するらしい。

アカアシ♀も遅れて飛来
アカアシ♀も遅れて飛来



飛来するクワガタは飛んできたものが地面に落ちれば音で確認できるのだが、人知れず飛んできて布に張り付くクワガタは、気は付かない内に布の隙間に潜り込んでしまうので、定期的に布地を確認していく。なにやら大型の甲虫の姿が目に入ったが、カブトムシ♀であった。少々紛らわしい...。

カブトムシ♀も飛来
カブトムシ♀も飛来



ミヤマ♀が多く飛来し始めた。こうやって確認していくと、全体的に♂よりもやはり♀の方が圧倒的に飛来数が多い。

やはり♀の飛来が多い
やはり♀の飛来が多い



どういう訳か、地面を見るとアカハライモリまで集まってきていた。単なる偶然だろうか?

なぜかアカハライモリも集まってきた
なぜかアカハライモリも集まってきた



アカハライモリの近くにはコクワ♀が歩いている。

その近くにコクワ♀
その近くにコクワ♀



r.matsudaさん曰く「コクワの飛来は良い傾向。」だと言う。やはりオオクワとコクワは生態が近いので、いよいよの可能性も高まって来たのだろう。

ちょっと驚いたコクワ♂
ちょっと驚いたコクワ♂



それにしてもライトに集まってくる蛾の量は、もはや千単位であろう。何というか、ここまで虫を引き寄せるライトトラップが“魔法陣”の様に見えてきてしまった。布の表裏には模様の様にギッシリと蛾が張り付いている。

とにかく蛾は凄い数
とにかく蛾は凄い数



バチッと地面を叩く音がしたので目をやると大型のミヤマ♂が飛来した。この時点でかなりのミヤマを確認しているが、本当に贅沢な一時に感じる。

大きなミヤマ♂が飛来
大きなミヤマ♂が飛来



大型のノコ♂も飛来。蛾と戯れている。

大きなノコ♂飛来
大きなノコ♂飛来



大型ばかりに目が行くが、極小のミヤマ♂が飛来していた。次から次へとミヤマが飛来するので感覚が麻痺しそうであるが、小さくてもミヤマが見られれば嬉しい。

小さなミヤマ♂飛来
小さなミヤマ♂飛来



何やら大型甲虫が佇んでいるので確認するとシロスジカミキリであった。何だかもの凄く久しぶりに見た気がする。相変わらず巨大なカミキリである。

シロスジカミキリ
シロスジカミキリ



極小ミヤマの後は、極小ノコ♂も確認できた。あまりに多すぎる羽虫や蛾に埋め尽くされている感もあるが、布にへばりついている。

極小ノコ♂
極小ノコ♂



またしてもバチッと音がしたので目をやると大きなコクワ♂が飛来していた。一瞬驚いたがコクワには変わりなかった。この時点で相当数のミヤマなどを見ているので、かなりの満足感であるが、実はメインディッシュはまだなのであった。・・・なんて贅沢な採集なのだろう。

紛らわしい大きなコクワ♂
紛らわしい大きなコクワ♂



次々と飛来する個体を確認しながらr.matsudaさんと様々なクワ話の花が咲く。r.matsudaさんの過去の興味深い採集話や昨年ご一緒した石垣島採集の話など、話は尽きない。そんな中、目の前に飛来したミヤマ♂を確認していく。

どんどん飛来する!
どんどん飛来する!



ドルクス系はある種の緊張感を感じるが、やはりその殆どがコクワ♀もしくはアカアシ♀だったりする。

コクワ♀だった...
コクワ♀だった...



それにしても蛾の数も半端ではない...。シートに近付くだけで自分の服が“蛾まみれ”になる。

近付き難いシート
近付き難いシート



それでも蛾の集まりに多少変化が出てきた様で、オオミズアオの様な大型の蛾が多くなってきた感もある。どちらにしても近付き難い...。

オオミズアオも増えてきた
オオミズアオも増えてきた



その後も大型の甲虫が飛来すると期待感が高まる。特にカブトムシは羽音が大きいのでドキドキしてしまう。

驚く羽音...
驚く羽音...



ライトトラップから少し離れた場所にもクワガタは飛来したり、トラップ付近に飛来した個体が歩き回っている場合があるので、少し離れた場所を懐中電灯にて照らしてみると、やはり数頭のクワガタを確認する事が出来た。

アカアシ♂
アカアシ♂



暫くクワガタの飛来は続いたが、ある一定期間を過ぎると次第にクワガタの飛来は少なくなった。r.matsudaさん曰く、「ライトトラップは虫の飛来に波がある。」と言う。“集まる時間帯”いわゆるゴールデンタイムと呼ばれるものがそれであろう。

クワガタの飛来が少なくなってきた
クワガタの飛来が少なくなってきた



r.matsudaさんも「この時間帯を利用して外灯回りに行きましょう。」と言うので、少しだけ外灯回りに行く事になった。




外灯回りを開始する。ライトトラップとは別に周辺の外灯も可能性があるとの事で、実際に外灯を回ってみると多くの虫が集まっていた。

外灯回りをする
外灯回りをする



とりあえず1つ目の外灯を確認しているとr.matsudaさんが「あっ!」と言うと共に右手を差し出してきた。この瞬間、この行為が何であるかすぐに分かったのでr.matsudaさんの右手を握り返した。そしてr.matsudaさんの指差す方向を見ると、オオクワ♀が佇んでいた。個体としては小柄ながらも立派な点刻を確認する事のできる綺麗な個体であった。・・・当然“へっぽこ”としては、この様な状況そのものが初めてであったが、外灯に飛来したオオクワ♀を目の当たりにして、「凄く良い経験をさせて頂いている!」と充実感を覚えた。

r.matsudaさんがいきなり見つける
r.matsudaさんがいきなり見つける



その後も外灯を回っていくとミヤマ♂の姿も確認できた。普段はミヤマ1頭でも確認できれば大満足であるが、今日は「いったい何頭のミヤマを観ているのだろう?」と“へっぽこ”らしくない感覚に陥る。

ミヤマ♂が歩いている
ミヤマ♂が歩いている



r.matsudaさんがアオガエルが居ると言うので確認すると、久しぶりにアマガエルでない大型のアオガエルを観る事ができた。

アオガエルも見つめる
アオガエルも見つめる



そのアオガエルが見つめる方向を見ると、外灯の下にミヤマ♂と見知らぬコガネが戯れていた。コガネの方は、いつも見掛ける個体とは違った趣を感じた。どうやら名前は「キンスジコガネ」というらしい。

見知らぬコガネとミヤマ♂
見知らぬコガネとミヤマ♂



それほど時間を掛けなかったものの、オオクワ♀を含めた多くのクワガタを確認する事が出来た。他の強豪者が少なかったからであろうか?

外灯でも多く確認できた
外灯でも多く確認できた



・・・とりあえずライトトラップに戻る事にした。




ライトトラップに戻ってみると、先ほど以上に蛾が集まっている様である。多少時間を空けた事でクワガタも飛来しているのだろうか?とりあえず周辺含め確認していく。・・・すると真っ黒い個体が佇んでいた。いくら“へっぽこ”であっても一目で何であるか理解できた。王者の証である点刻を携えたオオクワ♀であった。私の怪しいテンションに気付いたr.matsudaさんが近寄ってきたので、ガッチリ握手する。まさに夢の様な一瞬である。・・・やはりオオクワは一目で“それ”と判るので、過去の採集で「もしかして...!?」と感じていた個体は、やはり見間違えであろうと感じる事が出来た。それほどオオクワは存在感のあるクワガタである。

オオクワ♀が佇んでいた!
オオクワ♀が佇んでいた!



その後も周辺を確認していくと、暫く時間を置いた事で飛来のピークは過ぎているもののクワガタの姿は確認できる。中には今まで見たことも無い超大型のミヤマ♂も確認できた。

大型のミヤマ♂
大型のミヤマ♂



時間を置いた事で白い布地は、もはや白色には見えず、夥しい数の蛾が張り付いている。当然、数メートル以内に近付くと大量の蛾が服に張り付く事になる。これだけの虫を呼び寄せるのは、やはり魔法に近いものを感じる。・・・と、すでに今日1日の内容に大満足の中、奇跡は三度起こる。

何とシートにオオクワ♀が飛来していたのである。r.matsudaさんと今日三度目の握手をガッチリとする。まさか1日でオオクワを3頭も確認できるとは夢にも思ってなかったので、本当に驚く。・・・と言うか、日常的ではない光景に「夢かも知れない...。」という気分になってきた。

三たび、王者の点刻
三たび、王者の点刻



とりあえず3頭目のオオクワを確認したところでr.matsudaさんは「月が出てきたので、そろそろ終わりましょう。」と言う事で、ライトの灯を落とし車内で休む事にした。

・・・疲れているせいもあって、すぐに意識がなくなってしまった zzz






・・・翌朝。

まだ日の昇る前に起床し、ライトトラップの片付けを始める。r.matsudaさんは、手際よくトラップをバラしていく。

東北の夜明け
東北の夜明け



昨晩はその威力をまざまざと感じさせていたライトトラップもすぐに解体されてしまった。r.matsudaさん曰く、この解体するタイミングでもクワガタは見つかるというので、周辺を探してみると夜間に飛来した個体の残りを見つける事が出来た。その中にはミヤマ♀も確認できた。

見逃している個体も多い
見逃している個体も多い




一通り片付けも済み、昨日から採集した個体をチェックした後、リリースしていく。r.matsudaさんが「持ち帰りたい個体は居ますか?」と言って頂いたものの、私は持ち帰るつもりは無かったので、集まってきた個体に感謝しながらリリースしていく。

何というか“へっぽこ”として、おそらく今まで30余年生きてきた中で、今回の採集が断トツでクワガタを確認した日になったと言えるだろう。ライトトラップという未知なるクワガタ採集方法を経験できた事は“へっぽこ”にとって大いなる財産になったと感じる。全てr.matsudaさんのお蔭なので、本当に良い経験をさせて頂いたという感謝の気持ちで一杯であり、充実感に満ち溢れている。

夢のあと
夢のあと



これから先、何年経ってもr.matsudaさんと行えた今日という日の採集は“一生の思い出になる”と最高の気持ちで、東北の地を離れる事になった。


成績オオクワ♀×3 ミヤマ♂×20 ♀×34 ノコ♂×10 ♀×10 アカアシ♂×6 ♀×11 コクワ♂×11 ♀×16 カブトムシ♀×4
(魔琴:持ち帰りなし)

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