2014年1月24日、希少野生動植物の保護に関する条例により、アマミマルバネクワガタとアマミシカクワガタとヤマトサビクワガタは採集禁止となりました。詳細は、徳之島町サイトにてご確認下さい。下記、採集記は規制以前のものです。 |
2006.07.09(日)へっぽこ遠征in奄美群島(3日目)
とりあえず天候的に採集は出来なくても、仕掛けたフルーツトラップは回収しなくてはならない。それと“持ち帰らなくて良い採集個体”は現地にリリースしたいので山に入らなくてはならない。・・・自分なりに時間割を作りながら昨日採集したトクノシマノコ♂を観察してみる。大顎に南西を感じる。
とりあえずレンタカーで外に出る事にした。宿から海が近いので防波堤に行ってみた。・・・とんでもない波の高さだ! よく台風のニュースなどで、レポーターが波打ち際に立ってレポートしている、まさに“あれ”だ。・・・ただ、実際目の当たりにしてみると相当の恐怖感がある。これもニュースで見たりするが、興味本位で防波堤に立ち入り“突発的な高波の呑まれる”若者が居るが、自分もいつそうなるか判らない場所に立っている。・・・まだ人生でやり残した事が多くあるので、早々にこの場から立ち去った。
それにしても風雨が凄まじい。ワイパーをフルにしても、殆ど前が見える状況ではない。低速で安全を確保しながらポイントに向かう。
通常よりかなり時間を掛けて樹液の出ている箇所に辿り着いた。早速トラップ回収を始める。トラップのすぐ近くに、キノボリトカゲが佇んでいた。雨に打たれたその姿は昨日までに観た、素早い動きで樹を登り、緑や茶色など自由に体色を変化させる“国産カメレオン”とは程遠い、辛そうな姿であった。彼らも自然界を生き抜く為に必死なのだろう。
トラップを回収しようと樹から外そうとしていると、なにやら樹上に黒い個体が居るので確認するとトクノシマノコ♂が来ていた。どうやら今日来たというよりは、昨日からトラップに来ていた個体が休息している感じであった。それでもこの天候下でクワガタに出会えるとは思ってもいなかったので、この確認は嬉しかった。この個体はそのままにしておいた。
とりあえず、もしかすると樹液に来ているのでは?と半信半疑ながらも傘を差し大雨の中、樹液箇所に向かってみた。すると個体数はかなり少ないがトクノシマノコ♂♀を確認する事が出来た。この様な大雨の中でも活動しているとは恐れ入る。もの凄いバイタリティーである。
大雨の中、思うように作業は捗らないがトラップ回収を進めていく。自分の中では天候や状況はどうであれ、自然界に不自然に置いたもの(トラップ)なのでどんな事をしてでも回収は絶対だと思っている。採集の上手い下手ではなく、それが出来ないなら離島採集に来る資格は無いと思っている。それほど残されたストッキングほど不自然で景観を損ねるものは無い。
トラップの回収中、何気なく樹を確認すると樹の陰に風雨を凌ぐトクノシマノコ♂の姿があった。やはりこの台風の風雨は辛いのであろう。個人的にはトラップに集まる光景も良いが、この様な自然界のありのままの姿を観る事が出来た方が感動する。小さな昆虫でも厳しい自然界を頑張って生き抜いている。本当に立派な姿だ。・・・何だか小さな生き物達からパワーを貰った気がした。
その後も回収作業を続けて行く。回収したトラップに目をやると、何と小さなスジブトヒラタ♂が付いていた。それはもう本当に小さな小さな片顎の無い個体であったが、この状況下でトラップに来てくれた事に感謝したい。・・・こういう事もあるからトラップ回収は絶対に行なうべきである。・・・少しだけバナナの実を取り出し、この個体をリリースする場所に付けてあげた。少しでも長生きして欲しい。
スジブトヒラタ確認で非常に気を良くしながら、次のトラップを回収する。・・・何かポトっと落ちたので良く見ると、何とトクノシマコクワ♀が落ちていた。一瞬、「なんだコクワか...」と思ったが、リュウキュウコクワは本土のコクワに比べると個体数が少なく貴重だと聞いていたので、後から段々と実感というか嬉しさが出てきた。♀の個体はそれほど本土のものと変わらない印象を受ける。出来れば♂個体の方が大顎に“リュウキュウ”を感じらるそうなので、出来る事なら♂も確認してみたい。
更に“期待しながら”回収を進めていくと、今度は通常サイズのスジブトヒラタ♂がトラップ果汁をすすっていた。よくぞこの悪天候の中“へっぽこトラップ”に集まってくれたと思う。正直な所、トラップ回収さえ出来れば良いと思っていただけに、このスジブトやトクノシマコクワの確認は本当に嬉しい。元々、状況から見ても“ノコが居ればラッキー!”という感じだったので、別種が集まって来た事で逆に驚く。・・・ある話によると「天候が良ければノコが集まるが、天候が悪い時は普段ノコに追いやられてしまう“小さなヒラタやコクワ”などが集まる事もある」と聞いた事があったが、この状況はまさにその通りであった。・・・また1つ自然界の奥深さを知る事になった。
全てのフルーツトラップを回収し終え、帰りの準備を始めるべく空港に向かう。相変わらず風雨は収まらないが、自分の目で見てみたかったモニュメントがあったので立ち寄ってみた。“シドニーオリンピック 女子マラソン・金メダリスト”高橋尚子選手の記念碑であった。紆余曲折ありながら“金メダリスト”になった高橋尚子選手が小出監督(当時)と共に徳之島でトレーニングした道である。自分はこの様に、大記録の裏では人の真似できないほどの努力をしている“人間らしさ”に熱いものを感じる。中央に刻まれた小出監督の唄も良い!「雨風に 耐えて花咲く ときを待つ 夢の架け橋 徳之島」
とりあえずトクノシマノコ・スジブトヒラタ・トクノシマコクワが確認でき、記念碑も見る事が出来た...、と良い感じで来たが、天候としては全く改善の余地の無いほど悪天候のままである。帰りの飛行機の状況を確認すべく、早めに徳之島空港に行き確認してみる事にした。
しかし・・・
搭乗時間が来た。案内板の備考状況は“天候調査中”になったままである。これが“搭乗手続き中”になってくれれば欠航ではなく、羽田行きは飛ぶという事になる。
・・・そしてアナウンスが流れる。 「まもなく、東京羽田行き1958便のご搭乗を案内させて頂きます!」 ・・・それは、羽田まで飛行機が飛ぶという事を意味していた。 徳之島で諦めていたら、絶対に東京に帰る事はできなかったが、出来る限りの手段を使って良かった。
飛行機は無事に離陸して東京に向かい始めた。今回の“ダークゾーン”に関しては、諦めず冷静に判断できた事が“奇跡の帰還”に繋がったと思う。・・・気が付くと窓の外が眩しい。台風の厚い雲を抜けると、そこには神秘的に見えるほど美しい夕日が覗いていた。
“何が起こるかわからない”自分のスタイルは全てが“へっぽこ”である。それでも“へっぽこ流ロマン”に向かって前進する事だけはやめたくない。 成績:トクノシマノコ♂×6 ♀×2 スジブトヒラタ♂×2 トクノシマコクワ♀×1 (スジブト♂1頭以外、リリース) |