2014年1月24日、希少野生動植物の保護に関する条例により、アマミマルバネクワガタとアマミシカクワガタとヤマトサビクワガタは採集禁止となりました。詳細は、徳之島町サイトにてご確認下さい。下記、採集記は規制以前のものです。 |
2006.07.07(金)へっぽこ遠征in奄美群島(1日目) 鹿児島県・徳之島 7:30AM 晴れ 31℃ (超蒸し暑い) 2006年初の南西諸島は「徳之島」にした。特に理由がある訳ではないが、強いて言うなら“まだ行った事のない離島”という事になる。また徳之島固有種の「ヤマトサビクワガタ」も観てみたいし、トクノシマノコやアマミシカ等も可能であれば確認してみたい。充分、行く理由が存在している。・・・しかし、かなり気になるのは、台風3号が沖縄周辺を進路にしている様で「ダークゾーン」の影が既に見え隠れしている所が“へっぽこ遠征”らしい。
自宅を出て羽田空港に向かう。・・・到着後、チケットの手続きを行なおうとすると、着物姿の女性が目に付く。様子を窺っていると、どうもJALの職員らしい。考えてみれば今日は7月7日の七夕であった。航空会社も様々な思考を凝らしている様である。そっちに目が行っていたせいか“徳之島行き”と“徳島行き”を間違えそうになってしまった...。
搭乗手続きを済ませ飛行機に乗り込む。羽田から徳之島への直行便は無く、鹿児島空港を経由する事になる。・・・一度動き出した飛行機が動かなくなったので、もしやと思い窓の外を覗いてみるといつもの“朝の渋滞”にはまっていた。車と違って自分で運転(操縦)する訳ではないので気は楽だ。仕事の疲れもあるせいか、離陸する前に眠ってしまった...zzz
次に気が付いたのは鹿児島空港に着陸した瞬間だった。恥ずかしながら寝ぼけていたのか、空港に着陸した瞬間“飛行機が○ちた!”と勘違いしてパニックに陥りそうになった。・・・やはり疲れている様だ。徳之島行きまで1時間ほど時間があるので、空港内で席を見つけて腰を下ろす。
ボーっと時間が来るのを待つ。鹿児島空港からは徳之島行きは1日2便らしい。・・・初めて行く場所なので、全く現地のイメージが湧かない。本来であればネットや知り合いなど居れば、現地のポイントを充分に下準備してから行くものであろうが、自分は事前に図鑑などで現地のクワガタを見て、生息スタイルを知る程度の情報量にしている。飼育も標本も(当然売買も)やらない、現地でクワガタの姿をデジカメに押さえて、ホームページ用の採集記が作れれば、それで満足してしまう“へっぽこ”採集者なのである。・・・時間があるので持ってきたクワガタ図鑑を見ようと思ったが、自宅に忘れてきてしまった。
その後、10時55分の徳之島行きの飛行機に乗り込む。梅雨前線と台風3号の影響はある様で“条件付出航”となった。徳之島に降りられない場合は仕方がない。
鹿児島空港から飛行機に乗って1時間足らずで、徳之島は見えてきた。予想していたよりは天候の状態も良く、どうやら着陸は可能の様だ。南西諸島特有の蒼い海も見え始め、いよいよ“初体験”となる徳之島上陸である!
徳之島到着後、空港内の敷地に降りると目の覚めるような日差しが体に突き刺さる。まさに南国!天候不良が嘘の様に空も高く青い。今まで眠かった体も無条件でテンションが上がってくる。完全に体のモードが切り替わったのが分かった。
すぐに手配していたレンタカーを借り、フルーツトラップの準備に取り掛かる。自分の場合は大体、1回の離島遠征で多くても10個以内のトラップしか作らない様にしている。遠征の殆どが2泊3日なので、予め自宅で“バナナを焼酎に漬けて発酵させる作業”を行ってから持ち込む様にしている。それをジップロックの様なビニル製の袋に何重にもして入れてくる。袋の枚数が少ないと飛行機の機内の圧で“カバンの中で破裂してしまう”恐れがある。当然そうなればカバン内の服などは全て焼酎付けになってしまう。・・・10個程度のトラップと言ったが、この数で現地のクワガタが確認できればラッキーであるし、確認できなければ仕方が無い。また数を多く作りすぎると回収する手間も増えるので“絶対に未回収にしない”為にも自分の身の丈にあった採集方法を心掛けている。
それなりの準備が整ったので、早速山に向かってレンタカーを走らせる。“真夏の空にサトウキビ”この風景を見るだけで南西諸島を感じる事が出来るし、日頃のストレス社会を忘れる事が出来る!もうこのままずっと南西諸島に住んでしまいたい気持ちになる。クワガタ探索は自分にとっては最高の癒しになっている事は間違いない。
山に入ってみるが、当然勝手が分からない。とりあえず林道らしき道を流してみて雰囲気を感じてみる。大体いつもそうであるが、いきなりクワガタの気配は感じられない。簡単に見つけられればそれに越した事はないのだろうが、どうも何かしらのクワガタ1頭を確認するまでは「この島にクワガタは居ないのではなかろうか?」と感じてしまう。・・・でもこの状態から探すからこそ“宝探し”の様で楽しい!
とりあえず広葉樹は、手当たり次第ルッキングを行なっていく。もし樹液が出ていれば、何かしらの虫が集まっているかも知れないし、昼間に居なくても夜に確認する価値はあるからである。ただこの何年か離島を訪れているが、なかなか樹液の出ている樹は確認できない。
様々な樹を確認していく中、ニイニイゼミ(亜種?)がやたらとうるさい。セミという部分で気にしてみると、この徳之島では他にリュウキュウアブラゼミの鳴き声も聞こえるし、オオシマゼミらしき鳴き声も聞こえる。完全に真夏の光景である。どちらにしてもやかましい。
山間からふと蒼い海が見える。奄美大島や石垣島でもそうであるが、海が蒼いというのは本当に心が癒される。仮にクワガタが確認できなくても、離島の様々な風景を見る事が出来れば、それだけでも充分な収穫といえると思う。自分はそのくらいの余裕を持って離島に望みたいし、自分はそういう採集者でありたいと思っている。
と、ここまでクワガタらしい画像が全く無かったが、思い掛けない場所で徳之島のクワガタを確認する事が出来た。放置された様な荒地に、背丈でいうと2メートルも無い小さなミカン系の樹にトクノシマノコギリ♂がたたずんでいたのである。初の遠征地だったので、いつもならもう少々苦労すると思っていたが、唐突な確認だっただけに驚いた。慌ててデジカメを取り出し画像を得る。状況が現実として把握出来るようになってくると、驚きが嬉しさになって更にテンションが上がってきた。
1頭居るという事は“他にも居る可能性が高い”と感じ、目を凝らしてルッキングしていく。するとゴマダラカミキリが樹をかじって食事をしている。本土では、クヌギの場合「ボクトウガ」やヤナギなど「コウモリガ」などの活動によって樹液が出る場合が多いが、徳之島のこの現状を観た限りでは“カミキリがかじった後にクワガタが集まってきている可能性”があるかも知れない。気が付くと驚くほどゴマダラカミキリの個体数は多かった。亜種なのだろうか?
多くのゴマダラカミキリの中に、ようやく2頭目のトクノシマノコギリ♂の姿を確認する事が出来た。1頭目の個体もそうであるが、どうやら樹液を吸っている訳ではないので、夜を待つ為に体を休めている様にも窺える。
トクノシマノコは昼間には活動しないのかと思っていると、樹の根元に交尾中のトクノシマノコ♂♀が確認できた。♀は樹液を吸っている様なので、昼間に活動している個体もいる様である。それにしてもアマミ系のノコは“真っ黒”のイメージが強かったが、この♂の個体は“真っ赤”である。それもハンパな赤さではない。初めての場所なので観るもの全てが勉強になる。
なにやら地面に動いている物体が居るので、目をやるとトクノシマノコ♀が歩いていた。この個体も随分と赤い。そして奄美諸島特有の上翅に縦隆条が確認できる。奄美大島のアマミノコ程ではないが、奄美諸島のノコは何故その様な仕様になるのであろうか?素人レベルで追求するのは容易ではないが、非常に興味深い事である。
数本ある樹の根元を確認していくと、真っ黒で大きなトクノシマノコ♂が樹液を吸っていた。他の個体に比べて、はるかに大きな個体である事はすぐに判った。手を伸ばして個体を確認してみる。この時の「茂みに落とさない様に...」という緊張感もたまらない。
手にしてみると迫力のある大きな個体である。簡単にノギスで測ってみると67_ほどであった。もっと本格的に探せばこれ以上の個体も得られるかもしれないが、自分としては充分驚きのサイズである。考えてみれば奄美大島では、昨年アマミノコ♀を1頭確認しただけだったので、大型のリュウキュウノコ♂の個体をまじまじと確認するのは初めてである。自分は飼育も標本も全くやらないので、自宅に戻り他の個体と比べるような事ができない。それでも本土のノコと大アゴなど全く違う事は一目瞭然である。・・・このトクノシマノコ♂を観ていると改めて南西諸島に居る事を実感する。
ある程度時間を掛けて周辺をチェックしていくと、それなりの個体数が確認できた。知識が無いながらもアマミ系のリュウキュウノコは“真っ黒”のイメージであったが、徳之島産は個体によって赤黒とはっきり色が分かれる。ここまで赤黒に別れる要因に興味はある。
まだ外は明るいが18時を回っていたので、夜回りを考えると早めの夕食にしようと一度宿に戻る。宿の夕食は“奄美諸島らしい”鶏飯であった。しかも“食べ放題”なのが嬉しい。奄美大島の有名店の味までは行かないが、充分に鶏飯を堪能できた。思わず大盛り3杯食べてしまった。その土地の郷土料理というものが、合う時とそうでない時が多く、どちらかというと後者の方が多かったりもする中で、この鶏飯は本当に美味しい。
・・・夕食を済ませた後は、昼間に仕掛けた“フルーツトラップ”の確認へ行く。 しかし“忘れてはならない”恐れていた事が現実となった。林道をレンタカーで走っていると、少し先に何かがうごめいている。それが「ハブ」だと判るまでにそれほど時間は掛からなかった。ハブは猛毒蛇で、もし咬まれた場合、血清を打たなければ死に至り、血清を打っても後遺症は免れない事もある。昨年の奄美大島でも確認したが、この徳之島でも個体数は多く危険極まりない。ハブは夜間行動を起こすので、夜間の採集時には充分注意しなくてはならない。今回写真を撮るために少々近付いたが、それに気付いたハブはもの凄いスピードで草陰に消えていった。・・・もしこちらに向かってきていたら逃げられるスピードではなかった。・・・時間が経つに連れ“ハブ至近距離遭遇”という事実が、徐々に実感となりそれが恐怖心に変わっていった。その後、レンタカーから降りる事自体に躊躇するほど、恐ろしい体験になった。
次に良い気分に慣れなかったのは、ここ徳之島でも「サソリモドキ」を多く確認する事である。サソリモドキ自体は今までもう何度も観てきているが、やはり何度観ても気持ち良い物ではない。・・・しかも、大体同じ様な場所には“怪獣ムカデンダー”や“超獣ゲジ”も出現するので、いきなり目の前に現れると背筋が冷たくなる思いである。これも南西諸島ならではの光景であるが、南西諸島は色々なものがビッグザイズである。
気分を変えて、昼間に樹液の出ていた樹を確認してみる。・・・するとトクノシマノコ♂がすぐに確認できた。昼間に樹液に来ていた個体とは違う事が容易に判る為、トクノシマノコは昼夜問わず活動している様である。・・・それにしても夜間は、ハブが居ないか全てが恐るおそるになってしまうが、用心するに越した事はない。
その後、激しいスコールに見舞われてしまった。そのとんでもない降雨量に、とてもではないが探索を続ける事が不可能だったので、徳之島遠征初日としては“へっぽこ”らしからぬ採集内容となったので、本日の探索を終了する事にした。宿に戻ると海に近いせいか、数多くのヤドカリが宿の入口に集まっていた。この個体が南西諸島で有名な「オカヤドカリ」か判らないが、かわいらしい個体に心が和んだ。明日の徳之島遠征2日目も楽しみだ!
成績:トクノシマノコ♂×12 ♀×5 (イベント用に1♂持ち帰り。その他は最終日にリリース) |
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