2011年4月1日に種の保存法「国内希少野生動植物種」に指定され、ヨナグニマルバネクワガタは採集禁止となりました。下記、採集記は規制以前のものです。 |
2005.10.22(土)へっぽこ遠征in八重山列島(2日目) 沖縄県・与那国島 2:00PM 曇り時々雨 26℃ (超強風) 朝8時に朝食の為、強制的に起きる形になった。与那国島では食事をする場所が限られているので、宿の朝食を逃すとかなりきつい事になる。それにしても昨晩は、疲れていたにも拘らず寝つきが悪かった。理由は“とんでもない強風”である。海の上にある小さな島のせいか、海風がハンパではないほど吹き付ける。電線などはその風でビュービューと音を鳴らしていた。宿も“オンボロ”の為、お化けが出そうで怖かった...。それにしても宿の“ハエの集っていた”朝食は美味しくなかった...。何も無い島では贅沢は言えない...。
まずは食後の散歩という感じで「日本最西端の地」へ行ってみる事にした。改めて自分は凄い場所に居るのだと実感する。クワガタ採集という名目が無ければ、与那国島という場所に訪れる事は無かっただろう...。
それにしても風の勢いが、ハンパではない!被っていた帽子が軽く100メートルほど飛んでいってしまった...。何というかジャンプしたらそのまま台湾まで飛んで行けそうなぐらい、ハンパな風ではない!
崖ギリギリの所まで来てみた。・・・日本の“最西端中の最西端”な場所であり、晴れた日には台湾が見えるらしいのだが、あいにくの天候で台湾を望む事は出来なかった。思えば7月の対馬遠征時も晴れた日には韓国が見えると言われたが天気が悪く見えなかった...。異国には縁が無いらしい...。
笑われてしまうかも知れないが、台湾から漂着しているかもしれない「アカマルバネクワガタ」を探してみる事にした。ちょうど今年の「月間むしクワガタ特集号」に与那国島関連の同記事が載っていたのを思い出し、可能性はゼロではない限り試してみたかった。1時間ほどビーチを探索したが、虫らしいモノは全く見つけられなかった...。思えば昨日の晩に食べたカレー屋のお姉さんもこの件の重要人物だったらしく、この事は後で知り、そして悔やんだ...。
与那国島といえば「ヨナグニマルバネ」であるが、蛾の「ヨナグニサン」も有名である。そこでヨナグニサンの展示等している「アヤミハビル館」へ行ってみる事にした。ちなみに“アヤミハビル”とはヨナグニサンを与那国島の言葉で言い表すとの事である。
実はここに来た理由には、もう1つ訳があった。過去の「月間むし」で、何度も与那国関連の記事で掲載されている村松 稔氏とお会い出来ればと思っていた。先程の「アカマルバネクワガタ」を採集された記事が「月間むし」に掲載されたいた事は記憶に新しいと思う。お仕事中という事でご迷惑はお掛けしたくなかったのだが、大変ご親切に対応して頂き恐縮するばかりであった...。 10年前、名古屋から与那国島へ渡り、新聞配達などのバイトをされながら与那国島の虫を追い、この「アヤミハビル館」に就職され現在に至っている。そして現在も現役・村松氏の採集された多くの昆虫が「アヤミハビル館」に展示されている。改めて村松氏の功績に対して、心から尊敬の念を抱く。
展示物を観て行くと「ヨナグニマルバネ」があった。ヨナグニマルバネの生息状況として、村松氏いわく「現状としては、かなり厳しい状況。」との事であり、村松氏も今年の10月上旬に1♂採集されただけだと言う。いかにヨナグニマルバネが厳しい状況に追い込まれているのかがよく分かった。今後、ヨナグニマルバネは生き延びる事は出来るのであろうか?
「アヤミハビル館」を後にし、昨晩エライ目にあった森を明るい内に探索しておく事にした。明るい昼間だと、どうすれば迷うのか不思議なほど狭い場所に感じるが、夜になると全く雰囲気が変わるので、やはりある程度の予習は必要であろう。それにしても虫の雰囲気が感じられない...。
そして辺りは暗くなり、いよいよ最後のヨナグニマルバネ探索と行きたい所であったが、その前に腹ごしらえをする事にした。与那国島ではなかなか食事で良い場所が無かったのだが、やっと居酒屋風の良い店を探す事ができた。この店は「Dr.コトー診療所」の俳優や撮影スタッフも好んで来店していた様で、実際入店してみるとメニューも豊富で旅行客も気軽に入れる店であった。しかも料理が美味しいとなれば、開店後すぐに店の中は満員となる。偶々タイミング良く入店したので良かったが、後から来た客は1時間ほど待たなくては入店できないほどの盛況振りであった。「ツナ素麺チャンプル」が美味であった!
腹ごしらえも終わり、いよいよ探索開始。まずはトラップを見回っていく。するとタイワンカブトの亡骸を発見した。タイワンカブトそのものはそれほど重要視してはいないが、普段見慣れていないカブトムシなだけに興味はある。入島時、宿のオバチャンに「東京の葛飾から与那国島のクワガタを観に来た。」と伝えた際、オバチャン曰く、「カブト(タイワンカブト)は1年中、牛小屋の堆肥の中でいっぱい見つけられる!」と言っていたが、実際問題として見ず知らずの牧場に簡単に入ることは出来ないので、なかなか大量に居る場所を見つける事は出来なかった。
その後、サキシマヒラタ♀の亡骸も確認した。お約束の“元気な時に会いたかった...”という思いだが、サキシマヒラタは昨晩同様に10月中旬であっても、まだ活動している様である。・・・とは言うものの今日に限っては、強風という事もあるかも知れないが、日が暮れた後の気温はかなり下がり肌寒さを感じる。いくら南の島といっても10月を過ぎれば寒い日もあるのだろう。
・・・そして“本丸”ヨナグニマルバネ探索の為、昨晩の森に入る。 昼間に念入りに下見をしたとは言え、やはり夜になると山の中は昼間とは全く違う顔色になる。昼間通った時は、ほんの大した事無い“獣道”でも、夜になると“魔物道”に感じてしまう。特に離島の場合は何かあっても自分ひとりでは、どうしようもない事もあるので、ウエストポーチの中にミネラルウォーターとカロリーメイト等の非常食を持ち歩いている。ベテランの方から見ると大げさと思われるかもしれないが、念には念を入れておいて損は無いと思う。
相変わらずタイワンクツワムシの鳴き音が怖い...。 昨日の教訓を活かす為に、入り口付近の樹に「ビニルひも」を縛り付ける。こうする事で、もし森の中で迷っても自分の“ビニルひもを辿って戻れば、入り口に戻れる”はずである。ちなみに購入したビニルひもは300メートルの長さがあるので、“へっぽこ”の行動範囲から行けば、まず足りるであろう...。(ビニルひもは、フルーツトラップ同様に必ず持ち帰りましょう。そのまま残していくと景観が損なわれます。)
・・・しかし、臆病な拙者は「もし森の中で引き返そうとして、ひもを辿って行ってみたら何者かに切断されていて、再び迷ったらどうしよう...。」と冷静に見ればありえない事なのだが、本日の与那国島同様、非常に強い“臆病”風に吹かれまくっていた...。 森の中を時間を掛け探索していく...。しかし目的のヨナグニマルバネの姿は確認できない。入口から、たかだか300メートル程度入ったぐらいで採集できるほど甘くは無いだろう...。現状として絶滅する可能性の高いクワガタなので、そうそう簡単に見つける事は出来ないというのは分かっている。昨日の“森で迷う”というトラウマを感じながらも、「今日を逃したら一生、与那国島に来る事は無いかも知れない。」と自分なりに意識を高め、余計な事を考えず前に突き進む...。
・・・ふと昨日の事を思い出す。 実は昨晩、この与那国島である青年と偶然にもお会いする機会があった。青年の名は爆走kozou.Aさん。まさかこんな日本最南端の島でお会い出来るとは思ってもいなかった。初めてお目に掛かったが、深夜の与那国の山奥までヨナグニマルバネを追い求める姿に驚いた。氏のお話を窺うと、本当にヨナグニマルバネを採集するのに苦労されている様子だった。時間にしてほんの数分のお話であったが、若くして自分のやりたい事に向かって思いを爆走させる氏の姿を拝見でき、“only one”とは何か?と改めて自問自答する良い機会でもあった。爆走kozou.Aさんと深夜の与那国でお会い出来た事は、自分にとって良い記念になった。
・・・その後も時間を掛けて探索を続けたが、結局“幻のヨナグニマルバネ”に出会う事はできなかった。 今回の与那国島は今までの離島遠征と違い、簡単ではない本当にヨナグニマルバネの現状を知る事になった。成果が出なかったという意味では残念であったが、“ヨナグニマルバネの生息する与那国島”という、日本最西端の島を探索できただけでも有意義な遠征であったと思いたい。
ちなみに3日目は帰京の為、与那国→石垣→那覇→羽田の順で飛行機を乗り継ぐ事になっている。そこで、少しでも時間を有効活用したく、石垣島で那覇行きの飛行機の時間まで6時間ほど時間調整を行い、チャイロマルバネ探索を行う事にした。昨年は全く発生しない“大ハズレ年”であった様であるが、今年はどうなのであろう...。石垣島到着後、すぐにレンタカーを借り山を目指す。昨年も来ている場所なので、記憶をたどりながら探索していく。 しかし時折雨の降る中、気温も南国でありながら21℃と肌寒さすら感じる。・・・結局、時間の許す限りチャマル探索を行ったが結果は出なかった。もっと時間を掛けて探索しなければ成果は出ないのであろう...。こうなったら11月にもう一度、石垣島入りするしかない!!
成績:ボ〜ズ |